英国ケント大学で開発されたAdult Social Care Outcomes Toolkit(ASCOT)のイージー・リード(easy read)版の構築に着手した。この版は、認知機能や識字率に問題がある人々にも用いることが出来るようイラストが採用されている。報告者らは、これまでにASCOTの社会的ケア利用者自己報告版の日本語版を構築してきた過程で、主観的評価尺度が一般的に自記式質問紙の様式であるために,心身機能等の低下を理由に,その適用から除外される人々がいることが問題であると感じた。イラストの採用は,身体的・心理的なハードルを下げる可能性があり,主観的評価の主体を拡大することが期待できる. 2019年度は、原版開発者との間でライセンス契約を結び、国際的指針に従って8つの翻訳プロセスを実施した。ステップ1は原版(英語)から日本語への翻訳であり,2名の独立した言語学専門家を登用した.ステップ2は,2編の翻訳版を日本チームが精査し1つにまとめた.ステップ3は,翻訳版(日本語)を,英語に逆翻訳することであり,2名の独立した言語学専門家を登用した.ステップ4は,2編の独立した逆翻訳版を開発者チームが精査した.ステップ4から6は,上記のステップ1から3の繰り返しであった.ステップ7では,上記の各ステップで作成してきた全報告書を,参画した全員を招聘して討議し、続くステップ8で用いるための暫定1版を作成した. ステップ8のコグニティブ・ディブリーフィングでは,質的研究で用いられることが多い理論的サンプリングを用いて被験者を選出した.このステップでの被験者への質問は,表記された内容を理解できるか,他の用語で言い換えができるとすればどのようにするかである.このコグニティブ・ディブリーフィングでの被験者の反応を踏まえて,開発者チームと日本チームで討議し、暫定2版を作成した。
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