介護予防事業を実施している団体にヒアリング調査、大阪府下の街かどデイハウス実施団体にアンケート調査およびヒアリング調査、ドイツの民間事業である多世代の家にヒアリング調査を実施した。民間の介護予防事業を実施している団体のうち、介護保険事業を行っている比較的大きな団体では、介護予防事業の比重は小さく、不採算であっても他の事業の黒字で補填することによって継続を可能にしている。小規模団体では、財政・専門知識の不足を理由に、事業の展開・継続に困難を抱えている場合が多い。街かどデイハウスは、地域のボランティアが空家や空き店舗を利用して高齢者の居場所を作るという大阪府の独自事業として開始された。地域や利用者のニーズによって多様な運営がされていたが、大阪府の補助金が縮小されて以来、減少傾向にある。市によって街かどデイハウスの位置づけが異なり、運営に大きな影響を及ぼしている。実施内容が比較的自由な市では、子ども食堂など高齢者以外の利用が可能な地域の居場所として運営されていた。介護予防事業の実施団体として位置づけている自治体では、介護予防体操等の実施に対して補助金を出している。このような場合では気楽なおしゃべりや手芸などのリクリエーションを目的とする高齢者とのニーズと合わないため、プログラムの構成に苦慮している街かどデイハウスが多かった。しかしながら、補助金を減額せずに介護予防事業への転換を計画的に進めている自治体では、より虚弱な高齢者の利用を増やしている事例もあった。ドイツの多世代の家は、その名称どおり対象は、高齢者だけでなく、移民や子どもを持つ家族など多様であり、プログラムも地域特性によって様々であった。利用者、ボランティア双方にとって社会的孤立を防止する役割を果たしている。
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