研究課題/領域番号 |
15K00761
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研究機関 | 和洋女子大学 |
研究代表者 |
山本 高美 和洋女子大学, 人文社会科学系, 准教授 (10327182)
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研究分担者 |
藤代 一成 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (00181347)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 人体計測 / 3Dスキャナ / ファブリケーション / アパレルCAD / 自動作図機能 |
研究実績の概要 |
本研究は,3Dスキャナにより採取した人体形状を分析することで個人の体型にフィットし,パターン設計において柔軟性をもつアパレルファブリケーションシステムの開発を行うことを目的とする. 本年度は,身頃原型作成システム,ブラウスのデザインシステムの開発を行った.身頃原型作成システムは,女子人体の上半身は複雑な立体であり,前身頃ではバストダーツの処理,後ろ身頃では肩甲骨ダーツの処理が必要である.さらに肩傾斜や袖ぐり線など,上半身は下半身より難しい部分が多くある.作図は,3D計測により各部位を詳細に計測できることから,短寸式をベースに一部胸度式を取り入れた.本システムで作成した身頃原型を着装した結果,仮縫いなしで体型に合う身頃原型になったことが示された(論文投稿準備中).この結果を踏まえ,ブラウスのデザインシステムの開発を行った.ブラウスのデザインシステムは,ボックスシルエット,フィットシルエット,ソフトフィットシルエットの3種のデザインとした.衿(9種),袖(4種)はこれまで開発した自動作図機能を使用できる.これにより,トップアイテムとしてブラウスが作成され,衿,袖を自由に組み合わせることにより多くのデザインが得られるシステムとなった(論文投稿中). 次に,3Dスキャンされたポリゴンモデルから,人体の内部と外部を陰関数的に定義できるボリュームモデルへの変換に成功した.最初は,ノイズのない架空の理想的な人体モデルを用いて理論検証していたが,今回は実際に計測誤差を含む,女子大学生のスキャンデータを用いてボリュームデータの生成に成功した.どんな人体モデルであっても,陰関数モデルへ変換(ボクセライゼーション)できることを実証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の実施計画は,(A)平面展開ができる人体形状分析アプリケーションの開発,(B)分析データを用いた作図方法の開発,(C)2D-CADによるパターン設計,(D)ユーザ評価である. (A)平面展開ができる人体形状分析アプリケーションの開発は,3Dスキャンされたポリゴンモデルから,人体の内部と外部を陰関数的に定義できるボリュームモデルへの変換に成功した.どんな人体モデルであっても,陰関数モデルへ変換できることを実証した. (B)分析データを用いた作図方法の開発,(C)2D-CADによるパターン設計,柔軟性のある半自動作図機能の開発は,身頃原型作成システムは,論文投稿準備中である.ブラウスのデザインシステムは,論文投稿中である. (D)ユーザ評価は,身頃原型,ブラウスそれぞれにおいて,1D・3D計測で作図したパターンを用いて作成し,着装評価を行った.さらに,アンケートとインタビュー調査も行っており,本システムにおいて良い評価を得ている. 以上より,進行状況としてはおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である次年度は,次の(A)~(D)についてさらに研究を深め,総括を行い学会発表,論文投稿していく. (A)本年度は,ボリュームデータに対して画像処理のような信号処理を施すことで,体積を保存しながらも計測誤差を除去し,個人の本質的な人体形状を示す理想的な人体モデルの生成を行う. まず,人体のボリュームデータによる人体計測アプリケーションの開発を行う.ボリュームデータを用いることにより,ポリゴンデータでは計測できなかった,袖ぐり,股上前後長,衿ぐりなどの計測ができる.また,ボリュームデータでは,より美しい曲面を持つ型紙の生成が可能となることから,アイテムのパターン作成システムの開発を目指したい.研究の成果をNICOGRAPH等で学会発表,芸術家学会等に論文投稿をする. (B)分析データを用いた作図方法の開発,(C)2D-CADによるパターン設計,柔軟性のある半自動作図機能の開発では,これまでスカート,パンツ,身頃原型,ブラウスができている.これにより,ボトムアイテム,トップアイテムが揃った.次は,ボトム,トップを統合して,ワンピースデザインシステムの開発を行う.本システムは,ウエストはぎで上半身はフィットし,下半身はセミタイトなラインとした.これまで開発した身頃原型作成システムと,スカート原型作成システムを基に開発した.ワンピースでは,体型によりバスト,ヒップのバランスが難しくなる.本システムでは,ウエスト断面,バスト断面を入力データとして,ヒップはパラメタとして下半身の特徴ある5断面の外包囲を入力した.これにより,各自の体型にフィットするワンピースとなった.研究の成果は,日本感性工学会等へ投稿する. (D)ユーザ評価として,縫製を行い,研究協力者による着装評価,およびインタビュー,アンケート調査を行う.ユーザ評価に基づき,本システムを修正・改良する.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は主に,ブラウスのデザインシステムの開発,ポリゴンデータをボリュームデータ化する研究を行った.研究費は,論文投稿に専念したが,論文の採録に至らなかったこと,学会発表に行かなかったことから,論文の投稿料,出張旅費の計上がなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は,人体のボリュームデータによる人体計測アプリケーションの開発,ワンピースデザインシステムの開発を進めたい.また,学会発表および論文投稿を行っていきたい.そのため,昨年度使用できなかった分を含め,連携研究者への謝金,論文投稿料,学会発表などに計上したい.
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