ニーズ調査の結果,「文字入力正答率の向上」「入力時間の短縮」「電極および電極配置の変更」「文字盤の変更」が必要なことが判明した.これらの各問題に対し改善案を検討し,BCIシステムを設計した.また,設計したBCIシステムについて健常者・作業療法士を対象とした評価実験を第1実験と第2実験に分けて行った. 第1実験では,事前指導の有無,使用電極の違い,電極配置の違いによる正答率の比較実験を行った.結果として,使用電極,電極配置の違いによる正答率の変化は殆ど見られなかったが,事前指導を行うことによって,正答率が42%から78%まで向上した.また,事前指導によって文字入力時におけるターゲット刺激以外への注意散漫の数が減少した.第2実験ではSOAと刺激回数を変えることで入力時間の短縮を図り,文字入力正答率を維持できるかを検証した.結果としてSOAの長短に関わらず刺激回数が少ないと正答率は低くなり,正答率にはSOAよりも刺激回数の方が影響していることが判明した. 第1実験,第2実験の結果からニーズに対する提案手法が効果的であることが分かった.この結果に基づき,実際のALS者2名によるBCI評価実験を行い,負担なくBCIの利用が可能であり,高い文字入力正答率が得られるか調査した.結果として,1名が正答率100%を達成し,ALS者のBCI操作においても健常者同等のパフォーマンスが得られることが分かった.また,電極装着の手間や配置箇所による頭部圧迫などの負担を解消することができた.
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