研究課題
本研究はALS患者の医療・在宅現場における日常利用を想定したBCIの開発を目指した.BCIの実用化にあたって解決すべき課題や個々に抱えているニーズを把握するために,ALS患者と介護者である作業療法士を対象としたニーズ調査を行った.調査結果から,BCIの利便性と入力精度の向上が必要であることが判明し,それら課題を解決する手段として電極配置に着目した.ニーズ調査では,2名のALS患者を対象に日常姿勢やコミュニケーション手段といった現在の状況,BCIの性能に関するニーズ,BCIの使用感に関するニーズを聴き取った.また,作業療法士も同様のBCI実験を体験し,ALS患者や介護者の目線から課題点やニーズを聴き取った.調査結果から様々な問題点が浮き彫りになったが,電極に関する問題を解決することによりBCIの利便性と入力精度の向上が可能であると推測し,電極配置法を検討した.電極配置法を提案するにあたり,従来から使われている正答率と新たに提案したP300判別率DRを電極配置の評価指標として決定した.DRにより各電極数での適切な電極配置を決め,正答率によりBCI使用者個人ごとの最適な電極配置を決定する電極配置法を提案した.ALS患者1名を被験者としたBCI実験の計測データを使用して,ALS患者の最適な電極配置を決定する検証を行った.結果,電極数8から1個まで正答率100%を維持することが確認された.つまり,被験者の最適な電極配置はCzのみを使用する電極1個の配置となった.これは,被験者の集中度合の高さに起因するものではないかと考えられた.以上より,電極数の減少による正答率(BCI入力精度)の向上が確認された.従って,本論文で提案した電極配置法によってBCIの利便性と入力精度の向上が可能であると示され,BCI実用化に対する課題やALS患者のニーズの解決に繋がったと言える.
2: おおむね順調に進展している
ALS者のニーズ調査の結果の「電極装着を簡便にする」というニーズが、電極数を削減する手法の考案により理論的に削減できることがわかったので、おおむね順調に進展しているとした。
昨年度の結果を受けて、電極を削減した脳波センサーを開発して実験を行う。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件)
Journal of Artificial Life and Robotics,
巻: 22 ページ: 83-89
DOI, 10.1007/s10015-016-0336-z