本研究は、地域に身近に点在する街区公園を主な対象とし、子どもと高齢者をつなぐ地域コミュニティの拠点としての公園のあり方を模索するものである。公園の利用形態および空間的特性を捉えるために、行動観察調査およびアンケート調査、ヒアリング調査を行う。利用者の視点に立脚した調査研究により、地域住民の生活に直結した提案を行う。 これまでの調査データを踏まえ、2015年度は埼玉県所沢市を対象とし、高齢者の利用形態を中心に調査を行った。2016年度は、川崎市宮前区を調査対象とし、管理体制の違いによる公園の利用形態、イベントを通した公園の使われ方と計画、犬の散歩からみる公園利用と交流の形態という視点で調査・分析を行った。 最終年である2017年度は、栃木県小山市大谷地区を対象とし、地方の公園を調査対象とすることにより、都市圏との相違および地方ならではの問題点を抽出した。また、調査とは別に、地域の人々をつなぐ仕掛けとして、実際に公園においてイベントを企画、開催した。イベントの場所は川崎市宮前区の公園である。研究室で、流しそうめん、手作りワークショップ(布を使ったシェードの作成)、紙芝居、昔遊び等を企画し、研究室の学生と地域の高齢者により実施、地域の子どもたちを中心にイベントに参加してもらった。 研究期間を通じて実施した調査結果をまとめると、どこにでもあり誰もが使える公園であるが、うまく活用しきれていない実態が浮き彫りとなった。問題の要因としては、管理体制、設備の老朽化、住民の参加意識の低さなどがあげられる。地域により使われ方にそれぞれ違いはみられるが、全般的には公園が開園してからかなりの年月が経っているなかで、住民の変化に対するハードが対応していない。今後は、行政まかせにせず、住民の手による管理、イベント開催などのソフト面の充実が求められる。
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