要介護高齢者の自宅での継続居住を支える中核的サービスとして期待されているのが、包括報酬型の定期巡回随時対応型訪問介護看護(以下、定期巡回)と小規模多機能型居宅介護(以下、小規模多機能)である。両サービスの適切な普及ならびに利用者の居住の安定化を目的に、3年間にわたって以下の調査を実施した。 1 デンマーク F市の訪問介護ならびに訪問看護の実態調査 定期巡回はデンマークの訪問サービスをヒントに創設された。日本との類似点と相違点を明らかにするために、人口3.5万人のF市における訪問サービスについて実態調査を実施した。一週間分の訪問介護利用者(952名)のサービス内容とサービス時間分析、一日の訪問スタッフ(47名)の業務分析ならびに移動ルート分析した結果、①一週間あたり平均3時間35分のサービスを受けていること、②身体介護と生活支援の双方のサービスを提供していること、③深夜と準夜は身体介護と食事準備に特化していること、④日中・準夜・深夜で市内を1~6エリアに分けていることが分かった。定期巡回と比べて、対象者の幅を広くすることで密度を高めるとともに、より効率的なエリア設定を行っていることが確認された。 2 日本における小規模多機能と定期巡回の実態調査 定期巡回と小規模多機能の双方を同一拠点で運営している3法人を選定し、利用者データと終結者データを収集したうえで、管理者に対して半構造化インタビューを行い、運営基盤確立に見出された概念とカテゴリーを生成し、ストーリーラインを構築した。分析結果から、顧客定義とそれを踏まえた普及啓発を通じて安定的な利用者確保を行っていること、ケアマネジャーとの親和的協働がなされていること、通所、短期入所といった外部化されているサービスとの調整に課題があることが明らかとなった。さらに一連の過程全体において拠点単位での取り組みが重要な意味をもつことが示唆された。
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