研究課題/領域番号 |
15K00769
|
研究機関 | 畿央大学 |
研究代表者 |
東 実千代 畿央大学, 健康科学部, 教授 (10314527)
|
研究分担者 |
岡本 啓子 関西福祉大学, 看護学部, 教授 (10382300)
萬羽 郁子 東京学芸大学, 教育学部, 講師 (20465470)
濱田 信夫 大阪市立自然史博物館, 学芸課, 外来研究員 (40270764)
佐々 尚美 武庫川女子大学, 生活環境学部, 准教授 (50379525)
磯田 則生 奈良女子大学, その他部局等, 名誉教授 (60016871)
久保 博子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (90186437)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 高齢者 / 熱中症 / 生活習慣 / 住まい方 / 温熱環境 / 温冷感 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、高齢被験者50名のうち調査開始時から継続的に被験者として協力を得ている男性9名(70-81歳)女性7名(69-85歳)を抽出し、測定結果のフィードバックや熱中症関連情報の提供、温湿度計設置等の取り組みが実際の環境調節行動や生活習慣の改善にどの程度寄与したか、過去の結果と比較するための調査を実施した。概要を以下にまとめる。 (1)環境調節行動について 暑さや熱中症対策として日中にエアコンを使用する意識は向上しており、健康に良くない、電気代がかかるという意識に減少傾向がみられた。一方、就寝時のエアコン使用に対しては過半数が否定的である状況に変化はなかった。寝室の温熱環境は住宅熱環境評価基準値と比較して高温であり、外気温との相関がみられた。エアコン使用時に気になることとして約半数が他室との温度差と足元の冷えを挙げ、使用時の不快感低減に向けた対策が必要である。 (2)熱中症予防に関する知識・意識 熱中症予防に関する知識や意識については調査年による変動があり、定着面での課題が明らかとなった。熱中症の原因として、高温、高湿、水分補給が不十分、日差し等については8割以上が認知していたが、暑い環境に身体が対応できていないは半数程度、急に暑くなるは3割程度であり、高齢者の環境適応能低下に対する認識が不十分であった。熱中症を疑った際に身体を効果的に冷やす部位の認識や緊急時に助けを求める行動にも課題がみられた。 以上の結果をふまえて、看護師による保健指導を含めた情報提供の準備を進めるとともに、高齢者へのヒアリング調査をもとに温度環境を可視化するツールを制作し、平成30年度に被験者を増やして追調査を実施する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り調査および実験を実施してきた。 平成29年度までに実施した介入実験の結果より、水分摂取に対する意識は高いが実際の摂取量は不十分であるケースや、長年培ってきた生活習慣の変化を好まない被験者のなかには高温環境における活動量が大きい事例がみられるなど、室内環境測定結果のフィードバックや暑熱対策に関する情報提供による意識の定着に限界がうかがえた。一方、温度環境をを可視化するツールの評価は良好で、ツール使用後にわずかながらエアコン使用率が向上するなど、環境調節行動を促す効果が示唆された。より使いやすいツールの開発に向け実施したヒアリング結果をもとに改良版を試作するとともに保健指導を含めた情報提供資料の作成を行い、追調査の準備を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度は追調査を実施するとともに、これまでの結果を総括する。 追調査では、これまでの情報提供の方法では意識の定着という面で課題がみられたため、看護師による保健指導を導入する。また、温熱環境を可視化するツールは単に配布するのではなく、開発に参加する形をとることにしている。 結果の総括については、日常生活行動と温熱環境実測結果を高齢者の個人差にも着目して分析をすすめる。継続的に研究に協力頂いている被験者については意識と行動の変容を整理して若齢者のデータと比較する。高齢者の日常生活環境および暑熱対策の実態を総括し、身体機能の変化に応じた適切な住まい方や環境調節行動を促す方法の提案につなげる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度に使用額が生じた理由は、これまでの調査を分析した結果、情報提供のあり方と介入方法の再検討が必要との結論に達し、研究期間を一年間延長して追調査を実施することとしたためである。 使用計画としては追調査を実施するための費用に充てる。具体的には、温度環境を可視化するツールの作成と保健指導のための資料作成および打合せのための交通費等に使用する予定である。
|