研究課題
平成30年度は高齢男女33名(66-88歳)を対象とし、介入調査を行った。まず、本格的な夏を迎える前に看護師による保健指導を実施、さらに、環境調節行動を促すための温度環境可視化ツールを作成・配布し、使用状況と意識や行動の変化を調査した。追調査として室内温熱環境測定と熱中症予防に関する質問紙調査を行った。概要を以下にまとめる。(1)情報提供:今年度は専門家による保健指導として本研究組織で作成した説明用資料を用いたミニ講義形式で実施した。「熱中症からあなたの身体を守ろう」と題し、①加齢とともに起こる皮膚の変化、②加齢に伴う神経系の変化、③熱中症の予防対策、④熱中症の応急処置、などについて質疑応答を交えながら情報提供を行った。実際に自身の皮膚に触れて若年者との違いを確認し、熱中症のリスクとどう関わるのかを理解してもらいながら、身体機能計測データのフィードバックを行った。(2)温熱環境の可視化ツール:室内設置用と携帯用を感温印刷を用いて作成するにあたり、高齢者へのヒアリング調査を複数回実施して意見を取り入れた。大半はツールを居間と寝室に設置したが、玄関や台所に設置する事例もあった。約9割がツールを見ており、約8割は高温を示す色に変化した場合には環境調節行動(エアコン・扇風機)や涼しい場所への移動、水分補給、室温の確認等を行っており、一定の効果が確認された。過去に温湿度計を配布した際には温度を確認する割合が低かったが、ツールの色変化により暑熱環境であることに気づき、それが温湿度計で確認する行動を促したと考えられる。(3)温熱環境・予防意識:高温環境下での睡眠には質の低下が確認された。居間と寝室の温熱環境は外気温との関連が大きく、熱中症経験の有無による顕著な差はみられなかったが、一連の介入前後における熱中症対策の実践意識向上の程度には差が確認された。
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日本防菌防黴学会誌
巻: 46 ページ: 395-400