平成27年度は、まず、調査対象地域の住宅団地と関連する交通についての資料収集と調査の準備を行い、その実施は町内会への支援の依頼を五日市商工会協力のもと、研究代表者が所属するNPO法人を窓口に進めた。調査結果の分析の際には、交通弱者に対する対策の有効な方策について、数理解析手法を適用することで明らかにした。現在の段階で将来起こりうる問題を想定し、問題の発生を抑えるようシステムにより誘導することを目的に分析を進め、分析結果を論文で報告した。 平成28年度は、公共交通の整備が不十分な地域において運行されている乗り合い交通に対する意識調査の結果から、あらかじめ運行時刻と運行経路を設定した乗り合い交通では旅客需要が少なく運行を持続することが難しいことが明らかとなった。それを受けて乗り合い交通の情報を共有できるシステムのプロトタイプの試作を行なった。成果を論文で報告した。 平成29年度は、前年度のシステムの改良を行い、交通に限らず生活全般に関する情報も共有する機能を加えることで、住宅団地内の移動環境の改善だけではなく、生活環境全体の改 善を図る新しいシステムの構築を目指した。これは、移動手段を提供した住民に対して、人や物の移動の援助(乗車させた場合や、買い物の依頼を引き受けた場合)の対価に相応した利得を運用側で提供することを前提としたものである。そのままでは道路運送法に触れる行為となるので移動に関する相互扶助の機会を支援することで、地域コミュニティ再生に向けての契機となることにも期待した。この移動マッチングシステムのプロトタイプの開発と実装を行い成果を論文で報告した。
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