消費者が選んだ好みのデザインの既製服の型紙を、詳細な計測をすることなく簡便にカスタマイズできる「量産衣料のデジタル仮縫い工房」の開発を目標とする。本研究では型紙操作の基本となる上半身用のベーシックパターンを生成し、パターンモデル分布と体型の関連を調べる検討を行なった。 初年度は、研究の前段階で試作していた成人女性上半身用の着衣モデルを生成するプログラムを用いて、日本人成人女性55名(20から35歳)の上半身着衣モデルを作り、このモデルを2次元展開して衣服設計用のベーシックパターンモデルを生成するための手法を検討をした。上半身着衣モデルの3次元の特徴をよく現し、かつ再現性の高い展開方法を考案すると共に、展開図を相同モデル化してベーシックパターンモデルを生成するためのアルゴリズムを検討した。次年度は3次元プリンターで実体化した1/4サイズの着衣モデル4体に、ベーシックパターンモデルに基づいてトワールで縫製した上衣を試着させて適合性を観察する検討をし、パターンモデルの妥当性を検証した。いくつかの修正点はあるが、展開図より生成したモデルを衣服パターンと仮定することは妥当と考えられた。 最終年度では、修正点を配慮してベーシックパターンモデル生成するプロセスを改良すると共に、これを用いて新たにベーシックパターンモデルを生成し、展開図モデルの個人差の分布の特徴を主成分分析により調べる検討をした。この結果、胸囲、背丈、肩の傾斜、胸の傾斜、円背反身などの背面形状、前肩後肩などの肩の位置など、従来の仮縫いでよく修正される型紙の特徴が特徴軸となった。しかし例えばバスト部分の特徴の個人差は前見頃で大きく、後見頃では小さいなど、従来のパターンのグレーディングではカバーされていない特徴を見出すことができた。さらに検討を重ね、今年度中に学会発表、論文投稿などで成果を報告する予定である。
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