研究課題/領域番号 |
15K00779
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
伊藤 紀美子 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10281007)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | デンプン / 高アミロース / コメ / Branching Enzyme / Starch Synthase |
研究実績の概要 |
(1)デンプン分子構造の解析:予定していた受託解析が受託停止になったことと酵素の入手が出来なくなった事により、代替手法・代替酵素製品による解析手法の探索と再検討を行った。イソアミラーゼ分解産物の検出感度や解析スピードを考慮して、グリコーゲンをモデルとして、代替品のイソアミラーゼを使用した分岐鎖の枝きり条件を検討し、LC-MSにより解析した。その結果、適正な酵素反応条件を決定した。今後はアミロペクチンを使用して同様に反応条件を検討する。また、LC-MSによる低分子側の糖鎖解析を試みたが定量性の低さを改善出来なかったため、今後はHPSECにより解析する。 (2)デンプン関連酵素の発現と活性:ウエスタンブロッティングの結果、GBSSIについては各々の対立遺伝子に従った発現量が観察された。BEについてはΔBEIIb/Wxa, ΔBEs/Wxbにおいて、発現量の低下と共にそれぞれBEIIbの活性低下、BEI,BEIIa,BEIIbの著しい活性低下が観察された。 (3)デンプン粒表面構造の解析:イネの完熟種子の割断面の表面構造を電子線マイクロアナライザーを利用して解析した。5000倍の観察では、もち品種wxに比較して、GBSSIを発現するうるち品種Wxb、Wxa系統では比較的デンプン粒のサイズが大きい様子が観察できた。また、枝作り酵素の欠損するΔBEIIb/Wxa,ΔBEs/Wxbともにデンプン粒が丸く、また大きさにかなりのばらつきが観察された。さらに、デンプン粒との間に空隙があり、白濁化の原因となっていることが推定された。ΔBEs/Wxaも同様にデンプン粒が丸く、隣接するデンプン粒との間には空隙があり、さらにそのほとんどが細粒であった。以上の事から細粒の原因のひとつにBEⅡbの発現低下、欠損が推定された。以上により、BE三重突然変異体が特異なデンプン粒表面構造を持つ事を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BEs/Wxaの種子稔性の低さから多量にデンプンを使用する解析方法の採用が困難である。一方、分子構造の解析に目処が立ったこと、酵素活性染色やデンプン粒の表面構造の解析などおおむね順調に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
各種高アミロースデンプンについてX線粉末回折法による結晶構造の推定を行う。HPSECにより分子構造を推定する。また、酵素法により難消化性デンプン量を同定する。また、可能であれば変異体のプロテオームを解析し、明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた分子構造解析の受託先が受託業務を停止した。このことにより受託解析に使用する予定であった研究費用が残額として残った。しかしながら、代替法についてはまだ実施していないため、平成29年3月末時点で当該予算分が未使用である。
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次年度使用額の使用計画 |
受託解析に代わる方法による解析の目処が立ったため、代替法の実施のために平成29年度に使用する予定である。
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