研究課題/領域番号 |
15K00782
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
平島 円 三重大学, 教育学部, 教授 (80390003)
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研究分担者 |
高橋 亮 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (30375563)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 澱粉 / テクスチャー / アルカリ性物質 / 糊化 / 老化 |
研究実績の概要 |
アルカリ性に調整したタピオカ澱粉の糊化および老化過程について検討した.塩濃度を一定とした緩衝液を用いてアルカリ性水溶液を調整し,pHを高くした場合と,炭酸ナトリウム用いてアルカリ塩水溶液を調整し,pHを高くした場合を比較し,アルカリ性における塩濃度の影響について検討した. 澱粉の糊化および老化過程についてはDSC測定,粘度測定,顕微鏡観察,透過度測定,離水測定により評価した. DSC測定より,緩衝液でpHをアルカリ性に調整したタピオカ澱粉の糊化はpHが高くなるに伴い糊化温度は高くなり,糊化が起こりにくくなる傾向にあったが,pHが12.0を超えると糊化に要するエネルギーは小さくなり,温度さえ上がれば糊化は起こりやすくなった.このように高pHにおいて糊化が起こりやすくなる傾向は炭酸ナトリウム濃度を高くすることによりpHを高くした場合においてもみられた.すなわち,アルカリ性においては塩濃度の増加は糊化にほとんど影響しないと推察された.実際にpH>11.8のタピオカ澱粉粒子内では偏向十字が消失し,結晶構造が壊れた.そのため,澱粉粒子の膨潤が促進され,粒子内からアミロースやアミロペクチンの溶出が多くなり,タピオカ澱粉糊液の粘度が高くなった.また,糊液の透明度の高さにも影響した. しかし,pH11.8以下の澱粉糊液では糊化が起こりにくかったため,粘度は低下した.この影響については詳細な検討が必要であるが,弱アルカリ性の領域ではNa塩作用が強く,澱粉粒子内への水の侵入を阻害する可能性も考えらえる. また,高pHに調整したタピオカ澱粉糊液を保存しても,離水は起こらず,糊液の透明性に変化はなかった.したがって,糊化が起こりやすくなったpHが11.8を超えた糊液では,澱粉の老化の進行がゆるやかになるとわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アルカリ性に調整したタピオカ澱粉の糊化とタピオカ澱粉糊液の特性,タピオカ澱粉糊液を保存することによる経時変化(老化)については当初の予定通り,緩衝液を用いてpHを調整した場合と炭酸ナトリウムを用いてpHを調整した場合について比較検討することができたため.この方法により,アルカリ性における塩濃度の影響について解明することができたため. しかし,アミロース鎖やアミロペクチン鎖の長さを調べるために,試料の粒度文うの測定を試みようと試料の調製方法について検討したが,試料内のナトリウム含量の高いことから,うまくいかなかったので,この方法について再度検討しなければならないため.
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今後の研究の推進方策 |
20wt%のコーンスターチを用いて,ゲルを調製した場合のアルカリ性の影響について検討する.澱粉のpHの調製方法は今年度同様,緩衝液を用いる方法と炭酸ナトリウムを添加する方法を用いて比較する.手法にはDSC測定,ゲル強度測定を主に用いる. また,ジャガイモ澱粉や小麦澱粉,サゴ澱粉についても,今年度と同様にアルカリ性における糊化過程と糊液の特性,老化過程についても検討する. 高アルカリにおけるアミロース鎖とアミロペクチン鎖の状態についての検討は引き続き行う.
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