アルカリ性に調整した馬鈴薯澱粉の糊化および老化過程および糊液の物理的特性について検討した.炭酸ナトリウム,水酸化カルシウムを用いてアルカリ塩水溶液を調整し,pHを高くした.結果についてはpHを高くしたコーンスターチとタピオカ澱粉糊液のアルカリ性における糊化・老化の影響と比較検討した.澱粉の糊化および老化過程についてはDSC測定,粘度測定,顕微鏡観察,透過度測定,離水測定により評価した. アルカリ性に調整した馬鈴薯澱粉の糊化は,塩の種類や添加濃度ではなく,pHにより同様に変化した.pH11付近までの弱アルカリ性にすると,高温にしないと糊化が起こらず,澱粉粒子の膨潤度が低くなった.その影響を受けてアルカリ塩を添加した弱アルカリ性の3.0wt%馬鈴薯澱粉糊液の粘度はpHの増加に伴い低くなった.一方,pHが12を超える強アルカリ性に調整すると,糊化温度と糊化エンタルピーは低くなり,澱粉粒子の膨潤度は高く,糊化が起こりやすくなった.そのため,pH12付近の強アルカリ性では,粒子から溶出したアミロース鎖やアミロペクチン鎖の絡まりあいが多くなったことから,馬鈴薯澱粉糊液の粘度は高くなった. また,水酸化カルシウムでpH13付近と非常に強いアルカリ性に調整すると,糊化は起こりやすくなったが,糊液の粘度は著しく低くなった.溶出したグルカン鎖の長さに関係するのではないかと推察される. 馬鈴薯澱粉の老化過程への影響はpH11付近までの弱アルカリ性ではpHによる差はないことがわかった.しかし,pHが11を超える強アルカリ性に調整すると,老化の進行が非常にゆるやかになるとわかった. これらの結果もタピオカ澱粉やコーンスターチを高pHにした場合と一致したことから,澱粉を高pHにすると同様の影響を受けるとわかった.
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