研究課題/領域番号 |
15K00784
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
横井川 久己男 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 教授 (60230637)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 大腸菌O157 / 食品衛生 |
研究実績の概要 |
大腸菌O157の主要な感染源は食肉であるが現実には多様な食品群が感染源となり,家庭内での調理器具を介する食品の二次汚染が問題となる。食材ごとの調理器具の使い分けや殺菌は事実上困難であり,本菌による食品の二次汚染を防止する有効な対策が望まれる。本研究では、調理器具を介する大腸菌O157の挙動を明らかにするため、今年度は調理器具素材に付着した本菌の生存能と殺菌剤耐性を明らかにすることを目的とした。調理器具素材となる金属類やプラスチック類等の小片に,本菌を短時間接触させた後、自然乾燥や水道水に浸け置く状態で放置した場合の生存率,付着細胞の殺菌剤耐性の経時変化を調べた。その結果、調理器具素材に付着した生細胞数は、水道水に漬け置く状態ではほとんど低下しないこと、また、自然乾燥させた場合は1時間で約千分の一に低下することが判明した。一方、浮遊細胞は0.1 ppmの次亜塩素酸ナトリウムと室温5分間の接触で、99.9%以上が死滅するが、調理器具素材に付着した大腸菌O157は同条件で高い生存率(約50%)を示し、24時間経過後は、5 ppmでもほとんど生存するという耐性を示した。大腸菌O157が調理器具素材に付着した直後から、次亜塩素酸ナトリウムに対して高い耐性を示したことは、これまで明らかにされていない結果であり重要な知見と考えられる。以上の結果は、大腸菌O157の付着した調理器具は、迅速に洗浄する必要があり、より高濃度の次亜塩素酸ナトリウムが必要になることを示すと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は当初の計画通りに進展している。平成27年度は、各種調理器具素材に付着した大腸菌O157の生存能と殺菌剤耐性について検討した。調理器具類の実際の使用方法を考慮して,本菌が付着した平板を自然乾燥や水道水に浸け置く状態で放置し,経時的に付着した生菌数を調べた。調理器具類の実際の使用方法を考慮して,本菌が付着した調理器具素材の平板を自然乾燥させた場合、自然乾燥後の生存細胞数は1時間で約千分の一となった。一方、オートクレーブした水道水に漬け置いた場合は、生細胞数の減少は見られなかった。また、浮遊細胞に比べて付着細胞は次亜塩素酸ナトリウムに対する耐性が高く、付着後の時間経過と共に、殺菌に必要な次亜塩素酸ナトリウム濃度は急激に上昇することも明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
研究は当初の予定通り進行しているため、平成28年度の研究は計画通り「大腸菌O157の生育条件の違いが調理器具素材への付着と生存に及ぼす影響」について検討する。 生理学的状態の異なる大腸菌O157を使用して,素材表面への付着と生存を検討する。使用する細胞は,増殖段階が異なるもの,増殖温度の異なるもの,並びに保存条件の異なるもの等を使用する。調理器具素材や実験法は前年度と同様に行う。これまでの研究成果では,大腸菌O157の生育温度を15℃,25℃,37℃とした時,付着性が最も低いのは15℃で生育した場合であった(研究研究業績(4)が,生育温度と付着性の関係をより詳細に検討すると共に,冷蔵や冷凍による保存期間が異なる大腸菌O157の付着と生存も検討する。なお,付着細胞の損傷により,コロニー形成能が低下することが確認された場合は,コロニー形成までの培養日数を延長して対応するか、プロピジウムモノアジドを用いるリアルタイムPCRで検討する。付着細胞の除菌・殺菌については,洗剤,殺菌剤,超音波処理,マイクロ波処理を行い,調理器具素材から遊離する細胞数や残存する細胞数を測定する。実験補助者となる博士後期課程院生は,培地や細菌細胞の調製、付着細胞の除菌・殺菌実験,コロニー数の計測等において補助的な作業を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に学会参加にかかる旅費、参加費等で使用したが、支払いが完了していないため。
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次年度使用額の使用計画 |
4月に支払いが完了する予定。
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