研究実績の概要 |
大腸菌O157の調理器具素材への付着と生存における食品成分と共存細菌の影響について検討した。食品成分については、これまでに食肉成分を検討したが、今年度の穀類に関する研究で、穀類成分が本菌の付着に大きな影響を与えることが判明した。穀類として、アマランサス、うるち米、大麦、キヌア、小麦、そば米、はと麦、とうもろこし、もちあわ、もちきび、もち黒米、もち米、の12種類の抽出液を用いて、本菌の付着性を調べたところ、いずれの抽出液も、ポリスチレン、ステンレス、ガラスに対する付着性を高めることが判明した。これまで、たんぱく質性の汚れは細菌の付着を促進させると考えられてきたが、穀類の成分が、たんぱく質以上の付着促進作用を示した本研究成果は、細菌の付着性に極めて意義深い知見を与えると思われる、一方、穀類抽出液の調製条件によっては、付着性を抑制する成分も存在することが推定された。この成分は、熱に安定で分子量10,000ダルトン以上の物質と考えられたが、分子量が不均一で、かつ分子量の異なる成分は構成成分の比率にも違いがあると推定された。一方、共存細菌の影響では、他の腸内細菌科の細菌(Enterobacter cloacae、Enterobacter aerogenes、Citrobacter freundii 、Klebsiella pneumoniae、Proteus mirabilis等)の存在は、本菌の付着性を低下させることが判明した。
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