研究課題/領域番号 |
15K00787
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
幡手 英雄 宮崎大学, 農学部, 教授 (10325730)
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研究分担者 |
田中 竜介 宮崎大学, 農学部, 教授 (30399654)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 水産発酵食 / 抗酸化 / メイラード反応 |
研究実績の概要 |
小エビやアミを原料とする塩蔵発酵エビが東南アジア諸国で製造されており、それらにはタウリンや EPA、DHAなどの水産物に特徴 的な機能性成分が豊富に含まれている。一方、発酵・熟成工程を適切に行うことで塩蔵発酵エビの抗酸化活性が強化されることも報告され、その強化にはメイラード反応産物の関与が推察されている。H27年度の研究では塩蔵発酵エビに還元糖などを加えてメイラード反応を促し、それに伴う主要な栄養成分の変動や抗酸化活性への影響を調べ、小エビ (Acetes sp.) と食塩を3:1の割合で混合し、28~35°Cで発酵・熟成させた塩蔵発酵エビに、数種類のペントース、ヘキソースを添加してメイ ラード反応を促うことで、抗酸化活性が著しく強化されることがわかった。またこの強化にメイラード反応産物の関与が示唆された。同時にエビそのものの持つ抗酸化成分の関与も推察された。H28年度は原料エビに含まれる抗酸化成分の実態を把握ならびに有効な抗酸化成分の分離を試みた。その結果、含水エタノール溶液で抽出された極性画分に抗酸化成分の本体が存在することが明らかになった。H29年度は、引き続きこれら有効成分の分離を試行したが、夾雑物の排除が難しく構造解析はできなかった。一方、メイラード反応の進行によって消化性や栄養価の低下およびアミノ酸の損失などの悪影響も報告されている。そこで、メイラード反応を促した塩蔵発酵エビの抗酸化機能を調べるだけでなく、遊離アミノ酸や機能性脂肪酸などの生体成分の変化も併せて検討した。その結果、懸念されたような脂肪酸の酸化劣化は確認されなかったばかりか、遊離アミノ酸量は増加した。この増加は熟成過程のエビの自己消化酵素や共存していた微生物のタンパク質分解作用の関与だけでなく、塩蔵発酵エビの遊離アミノ酸以外のアミノ化合物がメイラード反応の進行に関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
水産物 (小エビ Acetes sp. )には陸上動物では僅少のタウリンや EPA、DHAなどの特徴的な機能性成分が豊富に含まれており、その発酵食材について有用性も指摘されている。筆者らは、水産発酵食の食機能は、その発酵・熟成工程を適切に行うことで塩蔵発酵エビの抗酸化活性が強化されることを示し、その一層の強化にはメイラード反応を促すことであると考え、塩蔵発酵エビに還元糖を加えて主要な栄養成分の変動や抗酸化活性への影響を調べた。その結果、添加した数種の還元糖はいずれも温度、濃度依存的に塩蔵発酵エビペーストで褐変物質(メイラード反応産物)の形成・蓄積が観察された。同時に、抗酸化活性の著しい強化のあることも明らかにできた。また、原料エビそのものにも有効な抗酸化成分の存在することを推定し、このことも明らかにした。さらに、この有効な抗酸化成分の分離や構造解析にも着手しているが、この操作に予想以上に手間取っており、最終段階の実験や論文作成等が遅れている。以上、
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では平成27-29年度の3年間で研究を完了する予定であったが、有効成分の分離精製等に予想以上に手間取り、それに伴って論文作成等もできなかった。従って1年間の研究期間の延長を申請し、承認されたことから、平成30年度は、有用成分の分離を再試行するとともに、塩蔵発酵エビの抗酸化機能強化に関わるメイラード反応の本体の解明にあたるとともに、論文作成等を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
H27年度備品購入した循環システム型濃縮装置のオプション類を厳選するなどして予定価格 (85万円)より20万円ほど安価で入手し、その後はほぼ計画通りに使用してきたが、H29年度は、目的成分の分離操作等に手間取り、予定通りに学会発表や論文作成ができず、28.8万円の繰越金となった。 (使用計画) 繰越金は、目的物質の分離精製に最適なHPLCカラムなど、高額の消耗品の購入ならびに学会発表、論文作成ならびに資料調査等に使用する。
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