小エビやアミを原料とする塩蔵発酵エビが東南アジア諸国で製造されており、それらにはタウリンや EPA、DHAなどの水産物に特徴的な機能性成分が豊富に含まれている。一方、発酵・熟成工程を適切に行うことで塩蔵発酵エビの抗酸化活性が強化されることも報告され、その強化にはメイラード反応産物の関与が推察されていた。このような状況から本研究では塩蔵発酵エビに還元糖などを加えてメイラード反応を促し、それに伴う主要な栄養成分の変動や抗酸化活性への影響を調べた。その結果、還元性をもつ数種ペントースおよびヘキソースの添加によりメイ ラード反応が促進され、その反応の進行とともに抗酸化活性が著しく強化されることがわかった。同時にエビそのものの持つ抗酸化成分の関与も推察されたことから、原料エビに含まれる抗酸化成分の実態を把握ならびに有効な抗酸化成分の分離を試み、含水エタノール溶液で抽出された極性画分に抗酸化成分の本体が存在することが明らかになった。引き続きこれら有効成分の分離を試行したが、夾雑物の排除等が難しく構造解析には至らなかった。一方、メイラード反応の進行によって消化性や栄養価の低下およびアミノ酸の損失などの悪影響も報告されている。そこで、メイラード反応を促した塩蔵発酵エビの抗酸化機能を調べるだけでなく、遊離アミノ酸や機能性脂肪酸などの生体成分の変化も併せて検討した。その結果、懸念されたような不飽和脂肪酸の酸化劣化は確認されなかったばかりか、遊離アミノ酸量はむしろ増加されており、旨味も強化される可能性が示唆された。還元糖との反応に関わるアミノ化合物が熟成過程等で生じる遊離アミノ酸に加えてタンパク質由来のアミノ基の関与することがモデル反応系で示唆された。
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