トランス脂肪酸の分析は、一般的には日本基準油脂分析法に記載されたガスクロマトグラフ法を使っているが、 脂質の前処理が必要であり、分析にも時間を要し、分析後のデータ解析も煩雑であるため、現場での利用が著しく困難である。一方、近赤外分光法は非破壊、迅速的な分析法として化学工業、製薬、医療、農業や食品など、きわめて有効かつ広い分野で利用されている。そこで、本研究ではフライ油のトランス脂肪酸と近赤外吸収スペクトルの関わりを調べ、近赤外吸収スペクトルを利用したフライ油のトランス脂肪酸の迅速評価技術の開発を試みる。 本年度では、予定された2種類植物油のフライ試験を追加実施し、採集されたフライ油のトランス脂肪酸量および近赤外スペクトルの分析を順調に行った。昨年度と同様に、15℃、25℃、40℃、60℃および80℃の試料温度の下で採集された近赤外スペクトルの違いを検討して、フライ油のトランス脂肪酸測 定への影響を検討した。その結果、いずれの種類のフライ油に対し、試料温度によるスペクトル変化の影響を小さく抑えて、温度補正型の検量線モデルの作成が可能であった。また、各種植物フライ油試料に対し、PLS回帰分析法をはじめのケモメトリックスの手法を用いて近赤外スペクトルによるトランス脂肪酸の予測モデルの検討を行った結果、フライ油のトランス脂肪酸と近赤外スペクトルとの関連性が認められ、多種類のフライ油に対応したトランス脂肪酸の予測モデルの構築が可能であった。
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