研究課題/領域番号 |
15K00791
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
吉村 美紀 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (90240358)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 鹿肉 / 栄養性 / 嗜好性 / 機能性 / カルニチン / 重量減少率 |
研究実績の概要 |
シカ肉の栄養性・嗜好性・機能性を検討し食品としての活用を促すため,シカ肉に多く含まれている機能性アミノ酸であるカルニチンの加熱温度とシカの固体差の影響について検討した。また,シカ肉の嗜好性の改良としてシカ肉に多穀麹を添加したときのカルニチン含有量の変化について検討を行った。 ニホンジカのもも肉を用い,加熱による影響では80℃,90℃,100℃で加熱を行い,これを試料とした。麹添加による影響ではシカ肉重量に対し1%の多穀麹を添加したものと無添加のものを10℃で24時間保存後,90℃で加熱を行い,これらを試料とした。LC-MS/MSを使用しカルニチン測定とクリープメーターを使用し破断特性の測定をした。また,加熱の際の温度測定と加熱前と加熱後での肉重量変化を測定をした。 温度履歴では最終芯温が80℃加熱試料で70℃,90℃加熱試料で85℃,100℃加熱試料で90℃となった。肉重量変化では80℃加熱試料で14.1%,90℃加熱試料で26.5%,100℃加熱試料で32.7%,麹1%添加試料で24.4%の減少が見られた。加熱温度による影響ではL-カルニチン・アセチルカルニチンが親水性・低分子であったため、重量減少率の少ない80℃加熱試料で高い値を示した。物性測定では80℃加熱試料が100℃加熱試料より軟らかいという傾向が見られ,肉重量減少率との関係がみられた。麹添加による影響では1%添加試料が軟らかくなり嗜好性は増したが,カルニチン測定では1%添加試料が無添加より低い値を示す傾向を示した。シカの固体差の影響ではシカの年齢による影響が大きいと予想していたが,有意な差は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度はシカ肉の物性および機能性アミノ酸含有量におよぼすシカ固体差の影響を検討を目標としており、目標にそった研究を行った。シカ肉に多く含まれている機能性アミノ酸であるカルニチンの固体差の影響について検討したが,予想していた年齢による固体差は少なかった。そこで,カルニチンを多く含むもも肉を用いて,平成28年度の目標にもあるシカ肉の加熱温度の影響およびシカ肉の嗜好性の改良としてシカ肉に多穀麹を添加したときのカルニチン含有量の変化について検討を行った。 シカの肉重量変化では80℃加熱試料で14.1%,90℃加熱試料で26.5%,100℃加熱試料で32.7%,麹1%添加試料で24.4%の減少が見られた。水溶性成分であるL-カルニチンとアセチルカルニチンは,重量減少率の低い80℃加熱試料はドリップ量が少ないため,高い値を示した。物性測定では80℃加熱試料が100℃加熱試料より軟らかいという傾向が見られ,肉重量減少率との関係がみられた。麹添加による影響では1%添加試料が軟らかくなる傾向を示したが、カルニチン測定では1%添加試料が無添加より低い値を示す傾向を示した。以上のような加熱温度による影響では結果を得ることができた。シカの固体差の影響ではシカ年齢による影響が大きいと予想していたが、有意な差は見られなかったので,試験個体数を増やすことで固体差を確認していくことを次年度の課題とする。平成27年度の目標はおおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の目標は,シカ肉の物性および機能性アミノ酸およびビタミンB群の加熱調理法・加熱温度による影響である。加熱温度と加熱時間を変動要因として,シカ肉のスチーム加熱においてシカ肉の硬さ・重量減少率などの物性の変化とカルニチン・アセチルカルニチン量およびビタミンB群への影響を検討していく。検討には年齢の異なるシカを用いることで個体数を増やし,前年度からの検討課題であるシカの年齢による固体差が認められるのかどうかの検討もあわせて進めていく。ビタミンB群は新たに加える項目であるが,食品成分表にもとづく方法で分析し,変動要因を検討していく。さらに近年,鹿肉のジビエ料理への推進があることから,高温度での加熱による調理の検討も必要と考えられるので,想定加熱温度を変更して検討していく。官能評価を実施し,評価項目は,香り、硬さ(識別),硬さ(嗜好),うま味,まろやかさ,総合的なおいしさの6項目で,5段階採点法を用い試料間の差を求める。被験者は,シカ肉料理を食べなれた経験のあるパネルとシカ肉を食べた経験が少ないパネルの2群で実施し,評価する。 肉重量変化,カルニチン測定,ビタミンB群などの栄養素,物性測定における各項目の有意差検定より,試料間の相関を求める。 また得られた結果を口頭発表および論文として発表を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度当初予算として物品費1,069,000円,旅費45,000円,人件費・謝金96,000円,その他90,000円を予定していた。物品費および旅費についてはおおよそ当初予算とおり執行し研究を遂行した。人件費・謝金とその他は使用しなかったため,次年度使用額として160,189円が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度当初予算は物品費639,000円,旅費45,000円,人件費・謝金126,000円,その他90,000円である。平成27年度から次年度への使用額である160,189円は平成28年度の物品使用額に追加して使用する計画である。平成28年度は官能評価を実施予定であり,人件費および謝金は予定どおり使用する計画である。
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