研究課題/領域番号 |
15K00791
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
吉村 美紀 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (90240358)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | シカ肉 / 栄養性 / 嗜好性 / 機能性 / カルニチン / シカ肉加工食品 |
研究実績の概要 |
シカ肉の栄養性・機能性の認知度と消費者意向の調査を引き続き実施した。本調査の対象者では、前回の調査と比較し、シカ肉の栄養性、機能性の認知度は低く、調査対象者の約6割がシカ肉を食べたことがなく、シカ肉は「臭いがしそう」「おいしそう」「硬そう」が高値を示した。一方、シカ肉を食べた経験のある人では、「おいしかった」「普通」「軟らかった」が高値を示し、良い評価が得られた。これらのことから、シカ肉を食べる機会を増やすことが良いイメージにつながることが推察された。 シカ肉加工品を用いて、栄養成分分析、カルニチン量測定、物性測定、官能評価から、シカ肉加工品の栄養、嗜好性、機能性について検討し、他種畜産加工品と比較した。シカ肉加工品では、たんぱく質と鉄分が多く、脂質が低く、エネルギーが低く、カルニチン量は多くなる特徴がみられ新規機能加工食品として役立つことが推察された。シカ肉含有量が高い加工食品では、表面色のL値とb値が低く、a値が高くなり、赤みが増し食味が低くなり、破断応力が高くなり、硬くなる傾向がみられた。一方で、他種畜産肉の一部置換により、脂質が高くなり、エネルギーは高くなるが、L値が高く、a値が低く、破断応力が低く、色の食味と硬さの改善が期待された。 シカ肉は野生のものであることから、シカ肉加工品の原料となるシカ肉の個体差の検討を目的として、雌雄別と年齢別(推定年齢1~6歳)の栄養成分(たんぱく質、脂質、炭水化物、鉄)の比較を実施したところ、シカ肉100gあたり、エネルギーは約90kcal、たんぱく質20g、脂質1g未満を示し、推定年齢間、雌雄間のいずれも個体差が少ない結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
シカ肉栄養の栄養性・嗜好性・機能性の解明を目的として、シカ肉の栄養性・機能性の認知度と消費者意向に関する調査とシカ肉の雌雄別・推定年齢別の栄養成分分析を実施した。シカ肉を食べることがシカ肉の良いイメージにつながることが推察された。シカ肉原材料の推定年齢別、雌雄別について、これまで1~2歳のシカ肉より、6~7歳のシカ肉がカルニチンを多く含むことを見出したが、平成29年度は、栄養成分(たんぱく質、脂質)においては、個体差は比較的少ないことなどを見出した。シカ肉を用いた新規機能加工食品の開発を目的として、シカ肉加工品の物性、栄養性、機能性についての検討を行った結果、シカ肉加工品は栄養性、機能性に特徴があることは明らかとなったことより新規機能加工食品として期待できた。一方で、シカ肉含有量の高い加工食品では、赤みが増し、硬くなる傾向がみられた。これらのことは、シカ肉加工食品の平均化につながる一方で、優位性をどのように見出すかが検討課題として残った。シカ肉の新規機能加工食品の目的をより精微に達成するために、シカ肉加工食品の追加実験を実施する必要があり、進捗状況としてはやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
シカ肉加工品では、たんぱく質と鉄分が多く、脂質が低く、エネルギーが低く、カルニチン量は多くなる特徴がみられた。シカ肉含有量が高い加工食品では、表面色のL値とb値が低く、a値が高くなり、赤みが増し食味が低くなり、破断応力が高くなり、硬くなる傾向がみられた。一方で、他種畜産肉の一部置換により、脂質が高くなり、エネルギーは高くなるが、L値が高く、a値が低く、破断応力が低く、色の食味と硬さの改善が期待された。シカ肉加工品は栄養性、機能性に特徴があることは明らかとなったことより、新規機能加工食品として期待できるので、この目的をより精微に達成するために、シカ肉加工食品の追加実験を実施する。また、これまで得られた結果を口頭発表および論文として発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 平成29年度当初予算では、物品費739000円、旅費45000円、人件費・謝金96000円、その他12000円を予定していたが、使用額は物品費で471676円の使用となり、当初予算より少なくなった。これは、平成29年度はシカ肉加工食品の開発、その物性および栄養性・機能性の影響についての検討を目的としており、そのために謝金、その他が当初予算より少なくなったことによる。 (使用計画) シカ肉加工食品の開発、その物性および栄養性・機能性の影響についての検討を目的としており、この目的をより精微に達成するために、シカ肉加工食品の追加実験を実施するため使用を予定している。またこれらの結果を学会発表、論文で投稿していく。
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