シカ肉の栄養性・嗜好性・機能性を検討し食品としての活用を促すため、シカ肉に多く含まれるカルニチン量および脂質代謝の補酵素であるビタミンB2量に着目し、シカ肉の加工方法およびシカの個体差の影響の検討および認知度調査を目的とした。 シカ肉加工時の加熱温度80℃、90℃、100℃の最終芯温は、70℃、85℃、90℃となり、肉重量減少は14.1%、26.5%、32.7%を示した。肉重量減少率の低い80℃試料は100℃試料より親水性・低分子のL-カルニチン、アセチルカルニチン量は高値を示し、軟らかくパサつきの少ない加工品となった。加熱温度によるビタミンB2量には有意差は認められなかった。麹による発酵法を取り入れた場合も有意差は認められなかった。シカの個体差では、雌雄間に有意差は認められなかったが、推定年齢が6~7歳のシカ肉は、カルニチンおよびビタミンB2を多く含む結果となった。シカ肉と豚肉混合加工品は、シカ肉100%加工品と比べ、表面色が明るく食感は軟らかくなるが、カルニチン量は減少した。以上から、栄養性・嗜好性・機能性を生かしたシカ肉加工品の新規開発には、推定年齢6~7歳のシカ肉を用いて80℃加熱加工法が望ましいと考えられた。 シカ肉の栄養性・機能性の認知度と消費者意向の調査では、シカ肉の栄養性についてある程度認知していたが、機能性については今後認知を高めることが課題となった。調査対象者の約半数はシカ肉を食べたことがなく、においがしそう、硬そうというイメージをもっていたが、シカ肉の摂取回数が多い人は、シカ肉の具体的なイメージがあり、有意に軟らかい、おいしいと評価した。また、自然環境保全の観点からも積極的にシカ肉を摂取していることが推察された。以上から、シカ肉の食品としての活用を促すためには、シカ肉の機能を生かした加工食品の開発により摂取回数を増やす取り組みも必要と考えられた。
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