研究課題/領域番号 |
15K00797
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
小林 奈央樹 日本大学, 生産工学部, 准教授 (30453674)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 咀嚼・嚥下 / 数理モデル / 粒度分布 |
研究実績の概要 |
本研究は, ヒトの咀嚼過程で形成される食塊に着目し, その構成要素である咀嚼食片の粒度特性を再現する数理モデルを用いて, 個人の咀嚼・嚥下過程の定量化を目指す研究である. ある個人から得られた実データと粒度特性に対する食品の物性や被験者属性の影響を踏まえて数理モデルを構成することで, 従来の機器測定等に比べ低コスト, 簡便に個人の摂食能力を評価できるような普遍的な指標の提案を目指している. 平成28年度に関しては,咀嚼および嚥下能力における重要な要素であるヒトにより咀嚼された食片が口腔内で舌や口腔運動によって唾液等とともに凝集された塊,食塊に関して以下の研究を行った。 1)平成27年度で検討を行ったイーデンモデルを基礎とした食塊物性モデルについて,そのシミュレーション法の検討した。 2)1) で挙げた食塊物性モデルについて,正規分布をもとにランダムな粒子サイズを生成し,それを踏まえたモデルクラスターの充填率の計算を行った。正規分布は平均値・分散という二つのパラメータで形状が決定されるが,それらはクラスターの充填率には影響を与えない一方で,総粒子数が充填率に大きく影響を与えることが分かった。この研究成果については二報の論文 (うち一報は受理された) にまとめられ,社会に公表する予定である。 3)1)で挙げた食塊物性モデルについて,現実の現象により多く登場する対数正規分布をもとにランダムな粒子サイズを生成し,それを踏まえた各種物理量の検討を行った。この課題については次年度以降の検討課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,ヒトの摂食過程における重要な過程である食塊形成に着目し,咀嚼片の粒度特性を再現する数理モデルを用いて,個人の摂食過程、特に咀嚼・嚥下過程の定量化を目指す研究である。それにより従来のような機器測定や生理学的測定、官能評価法よりも低コスト・簡便な摂食能力の評価を目指している。 その上で現代の達成度を振り返ってみると,おおむね順調に進展していると考えられる。その理由としては,平成27年度に導入・検討した摂食能力評価のための数理モデルについて具体的な物理量のシミュレーションなど,研究の進展がみられることが挙げられる。これについては論文にまとめられ,うち一報は受理されている。また,食塊物性に関する基礎研究として,これまでも行ってきた実験的な研究についても進展がある。これは昭和女子大学の森高初惠氏との共同研究である。実験的な研究についても論文として公表する予定であるが,平成28年度には達成されなかった。 以上の理由から,上のような達成度の区分を自己評価としてあげたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に関しては,昨年度までに得られた成果・知見を踏まえ,以下のような研究計画を立案した (交付申請書参照)。 1) 個人の食片データを用いた咀嚼・嚥下能力の定量化: 提案者および共同研究者によって得られた実際の食片粒度データを用いて擬似的に食塊を構成し,空間充填率をシミュレーションにより得ることで,平成28年度まで検討してきた食塊物性と空間充填率との関係について,実データの検討を行う。実データについては,提案者および共同研究者の実験により,機器測定や生理学的測定の結果が与えられているため,それらと比較することでより総合的な食塊物性と空間充填率の評価を行う。この研究方針については,本研究課題の期間を通じて検討を行っていきたい計画である。 2)数理モデルの改良: 数理モデルのシミュレーションを行うにつれて,計算時間や精度について検討する必要が感じられた。したがって,より大規模かつ高速にシミュレーションを行うために,クラスター形成や計算に関するアルゴリズムを再検討し,改良を行う。それにより,本研究課題の一層の推進を図っていきたい。 3)本研究課題の総括: 最終年度となるため,研究期間を通じた咀嚼・摂食過程の定量化に関する総括を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
成果発表の目的で申請した旅費および同様の目的で申請した論文投稿料を一部使用しなかったこと等により,171,335円分申請額との差が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降の旅費および論文投稿に係る費用に充てる予定である。
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