研究実績の概要 |
本年度は主として、ローズマリー加熱処理によって生ずる新たな5種類の生理活性成分(compound B, C, E, F, G、いずれもカルノシックアシッド類似構造でcompound E, Gは新規化合物)について、それらのPPARγagonist活性を詳細に検討した。より具体的には、receptor binding assayで上記5化合物のうち、compound B, Gにのみ明確なbinding及びagonist活性が認められたため、その活性がマウス脂肪細胞への分化能を有する3T3-L1でも、脂肪細胞分化促進作用として認められるかを検討中である。理研セルバンクより購入した直後の3T3-L1細胞には、insulinやdexamethazoneによる分化誘導がうまく働かなかったため、細胞の維持方法、継代方法に種々の工夫をこらし、ようやくrosiglitazoneというposotive control化合物での分化誘導活性が観察できるまでになった。またこのように改善された3T3-L1細胞で5種類の生理活性成分の分化誘導能を予備的に検討した結果、やはりcompound B, Gのみに分化誘導活性が認められることが判明し、これらの化合物が加熱食品にのみ含有される、大変興味深い化合物であることが明らかとなった。 また、新たな加熱食材として、珍しいきのこ類を中心に新たに15の食品を選択し、加熱及び非加熱時の抽出物を調製してDAD PLC比較を実施済みである。このうち、加熱タマゴタケ50%メタノール抽出エキスにのみ観察される新たな成分について、現在、溶媒での抽出条件、シリカゲルTLC,ODS TLCでの挙動、ゲルろ過での挙動などを確認しつつ単離精製を実施中である。
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今後の研究の推進方策 |
ローズマリー加熱処理によって生ずる新たな5種類の生理活性成分(compound B, C, E, F, G)については、3T3-L1細胞の脂肪細胞への分化誘導活性までの生理活性評価で、各化合物のPPARγagonistとしてのポテンシャル評価を完了としたい。さらに、これらのうち、おそらく最も有望と考えれらっれるcompound E, Gについては、ローズマリー加熱により大量調製を実施し、マウス糖尿病モデルへの経口投与で、有意な血糖値降下活性が出るかまで評価し、機能性食品成分としての可能性を深く検討したのち、学術論文として報告していきたい。 ローズマリー以外の食品についても、残り期間を通じてコンスタントに加熱・非加熱での成分変化をDAD HPLCで比較検討していき、食品の種類による傾向等が存在するかについて、ある程度の報告ができるようにまとめていく予定である。また本年度、新たな成分の候補としてタマゴタケ由来化合物が見出されてきたので、これの単離精製・構造解析・生理活性検討を進展させていく予定である。
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