研究実績の概要 |
本研究では、香辛料を中心に約50種の食材について加熱処理を行い、その有機溶媒抽出物について加熱前抽出物とのDAD HPLC分析(ODS系カラム、アセトニトリル濃度を変えたグラジエント溶出による多成分分析条件、検出200 nm - 600 nm)を実施して、加熱加工により生じる新たな食品成分を探索した。DAD HPLC分析において加熱抽出物についてのみ認められるピークが存在した場合、そのピークを各種クロマトグラフィーにより単離精製し、NMR(1D:1H, 13C, 2D: 1H-1H COSY, HMQC, HMBC, NOESY)及びHR-ESIMSを用いて構造解析を行った。さらに得られた化合物については、抗酸化活性(ラジカル種消去活性、一重項酸素消去活性)及び糖尿病予防活性(マウス3T3-L1細胞の分化誘導活性)を検討し、それら調理で生成した化合物の有用性を検討した。 その結果、 1)比較的多くの食材からフラフール誘導体が生成することが判明したが、本件については、すでに学術報告がいくつか見つかったため、論文化は行わなかった。 2)ローズマリーの加熱物に、新規化合物2種を含む5種類の新たなcarnosol, carnosic acid類縁体が存在することを始めて見出し、それらの化学構造と上述の生理活性について、論文化して報告した(Y. Buchin, Y. Sakemi, R. Hamashima, Y. Morioka, D. Yamanaka, F. Hakuno, S. Takahashi, K. Shindo. Phytochemistry Letters. 30, 43-48 (2019) 3)いくつかのcis carotenoidsが、all trans carotenoids含有食品の加熱により生じることも始めて明らかとすることが出来た。単離精製は既に完了し、現在それらの構造解析・生物活性検討中である。
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