省エネルギーで調理できる「保温調理」とポリ袋を用いた個別調理できる「パッククッキング」を取り入れた“保温パッククッキング”の手法を開発し、その有用性について検討を行った。試料は根菜類(だいこん、にんじん)およびじゃがいもを用いて、保温材(毛布・発泡スチロール・保温調理カバー)で保温調理する “保温パッククッキング”と他の調理法(ゆで・パッククッキング)との比較を行った。抗酸化性(DPPHラジカル捕捉活性、アスコルビン酸、総ポリフェノール量) 、破断強度および色差を測定し、官能評価を行った。結果として、じゃがいものDPPHラジカル捕捉活性及び総ポリフェノール量は、ゆでに比べ毛布による保温パッククッキングで有意に高い保持率を示した。根菜類の破断強度は、保温パッククッキング>パッククッキング>ゆでの順に低くなり、保温パッククッキングは、他の調理法に比べて硬い傾向がみられた。官能評価は、ゆで調理と比べて、パッククッキング、保温パッククッキングが総合評価で有意に高かった。前年度の実施した葉菜類と同様の結果が得られた。以上の結果により、保温パッククッキングはゆで調理と比べて、抗酸化性の保持率が高く、また官能評価による嗜好性もほぼ同等でありさらにまた消費エネルギー量もパッククッキング、ゆで調理に比べて有意に低いことから、災害時の利用できる、被災者および要配慮者の健康維持に有用な調理法であることが示唆された。研究期間全体で得られた成果をもとにレシピを開発し、「保温パッククッキング」のリーフレット(B5サイズ・全8ページ)を作成した。また本手法の普及を目的とした講習会を、和歌山県栄養士会主催のJDA-DAT 和歌山チームスタッフ研修会および奈良県北葛城郡夏期調理員研修会にて学校給食調理員、栄養教諭を対象に行った。今後も本手法の普及を目指す。
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