市販の調理用植物油を23種(試料数として46試料)入手し、主成分の脂質と微量成分の油糧植物由来成分(フェノール性成分を含むと考えれらる)の分離を試みた。調理用植物油のメタノール可溶画分について、ラジカル試薬であるDPPH(ジフェニルピクリルヒドラジル)のラジカル消去活性を指標に抗酸化性スクリーニングを行った。その結果、多くの試料がラジカル消去活性を示し、また80%以上の強い消去能を示すものもあり、調理用植物油に極性抗酸化成分が含まれることが示唆された。 調理用植物油のメタノールや水メタノール混合液可溶成分について、PDA検出器を接続したHPLCによる多波長分析で全フェノール分析を実施した。オリーブ油、サチャインチ油、えごま油、チアシード油については、抗酸化性フェノールを見出す目的でDPPH添加実験を行った。その結果、サチャインチ油の抗酸化性成分はトコフェロール類と考えられ、オリーブ油にはトコフェロールやオレウロペインとは異なる抗酸化性成分の存在が、チアシード油にはルテオリンやロスマリン酸とは異なる抗酸化性成分の存在が示唆される結果が得られた。えごま油については、焙煎油が非焙煎のものより酸化安定性が高く、この効果はトコフェロールよりもフェノール成分によるものと判明した。構造解析をしたところ、これらフェノール成分をロスマリン酸、ルテオリン、カフェ酸と同定することができた。クロマトグラムや油中含有量を考慮すると、抗酸化性成分のうちロスマリン酸がHPLCを用いたえごま油の初期酸化マーカーとなると考えられる。
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