研究課題/領域番号 |
15K00805
|
研究機関 | 就実短期大学 |
研究代表者 |
畦 五月 就実短期大学, 生活実践科学科, 教授 (60169620)
|
研究分担者 |
中田 理恵子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 准教授 (90198119)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | レクチン / 加熱調理 / キントキマメ / マウスB16メラノーマ細胞 / サトイモ / ブロッコリー |
研究実績の概要 |
レクチンは生の食品から精製されることが多く、加熱して食用となる状態でのレクチンの精製やその生物学的性質の研究は管見の限りみられない。そこで、属の異なる三種の食品を選定して、加熱後にも残存するレクチンを精製するとともに、その生物学的性質を食品を摂取した場合に期待できる免疫学的側面から明らかにすることを目的としている。 豆類からキントキマメ、野菜からブロッコリー、芋類からサトイモを選定して、生の状態のみならず、加熱し食用となる状態からレクチンを精製して、電気泳動によりその構造の変化を検討した。生とは異質のタンパク質に熱変性していることがその結果から明らかになった。特に、キントキマメについては加熱条件を一定にしていても、その条件のわずかな相違によりカラムクロマトグラフィーでのタンパク質の溶出パターンが相違する結果が明らかになった。そのために、まとまった量のレクチン試料の入手が困難となる事態が生じている。 本年度はキントキマメに焦点をあてて、マウス細胞を使用して、免疫学的性質の一部を明らかにした。生キントキマメから精製されたレクチンと、加熱したマメから精製したレクチン画分とは、阻害される糖あるいは糖タンパク質の種類が大きく異なる。さらに、生マメから精製したレクチンに存在したマウスメラノーマ細胞に対する細胞毒性も、加熱マメから精製されたレクチンには存在した画分とそうでない画分が認められた。これは、レクチン画分の糖特異性の違いのためと考えられ、この違いが免疫学的な性質に影響を与えると推察している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
キントキマメを加熱した試料からのレクチンの精製において、一定条件の加熱にも関わらずカラムクロマトグラフィーでの一定の溶出パターンが得られない結果となっている。そのため、サンプルの一定量の獲得が困難な状態に陥ったため、免疫学的性質の実験の一部に遅れが生じている。 さらに、加熱したレクチンは、クロマトグラフィーでの分画後凍結乾燥を行い試料の保存をはかる。しかし、この凍結乾燥後の試料は(水)不溶性となるため、レクチン活性の指標とする赤血球凝集活性(HA活性)が消失することがある。このHA活性が阻害糖などを代表とするレクチンの生物活性の動向を把握するために必須の指標であるが、そのHA活性消失が活性把握のための困難な要素を生み出している。また、サンプルが十分に得られていないために、共同実験にも遅れが生じていることが進捗状況が遅れている主な要因ともなっている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、キントキマメ、サトイモ、ブロッコリーの生及び加熱状態の試料から抽出したレクチンの免疫学的な機能について、マウス細胞を使用して実施する。その場合、免疫機能を、in vivo, in vitroでのマウス細胞を使用した各種レクチンの免疫関連遺伝子発現に着目して行う。またレクチン特有の作用である糖特異性に着目して、引き続き各種ガン細胞に対する特異性を検討していく予定である。レクチンは、摂取した場合に体内循環に乗ることが知られるため、食品として摂取したレクチンの体内の免疫機能に及ぼす影響について検討する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
細胞培養に必要とする機器の購入を予算不足のため見送ったために、余剰金が生じている。
|
次年度使用額の使用計画 |
細胞培養については、共同研究者との実験で行い、タンパク質の精製やその均一性を測定するために必要な機器及び試薬を購入予定である。
|