前年度までに、ナガイモを氷点下保管すると一定の温度域においてγ-アミノ酪酸(ギャバ)が増加し、並行してグルタミン酸が減少することを確認した。 最終年度は、ナガイモに加えて、ゴボウ、トマト、ジャガイモ(いずれも市販品)を試料とし、このうち、ナガイモ、ゴボウ、ジャガイモは切片化し、トマトは切断せずに試験を行った。いずれも脱気包装後、-5℃および-10℃のエタノール溶液への浸漬と、リキッドフリーザーを用いて最終的に-5℃となるよう段階的に低温化する方法で氷点下貯蔵(合計7日間)した。その結果、ナガイモとゴボウでは、未処理区(氷点下貯蔵なし)に比較して全ての氷点下貯蔵区でギャバが増加し、同時にグルタミン酸の減少が見られた。一方、ジャガイモでは-5℃および-10℃へ浸漬した試験区においてギャバ増加とグルタミン酸減少の傾向が見られたが、トマトでは処理の違いによるギャバ、グルタミン酸の変動は見られなかった。おそらく、試料サイズや成分組成に伴う凍結濃縮速度が影響したものと思われた。 次に、凍結濃縮と酵素反応促進の関わりを検証するため、温度別にペクチナーゼ試験を行った。ここでは、ペクチン溶液(基質)にペクチナーゼ(酵素)を添加し、酵素反応に伴い生成するガラクツロン酸を測定した。氷点下での試験は、-5℃としたエタノールブラインにペクチン・ペクチナーゼ混合溶液を部分的に浸漬し、氷晶を形成させた後、徐々に氷晶を成長させ未凍結領域(濃縮領域)を形成させた。これに5℃保管と酵素反応の至適温度となる50℃保管も併せて行った。その結果、5℃、50℃ともにガラクツロン酸は増加したが、-5℃で部分的に濃縮した未凍結領域においてそれを上回るガラクツロン酸が生成された。以上のことから、凍結濃縮領域において酵素反応が促進されることが示唆された。
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