研究課題/領域番号 |
15K00808
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
早川 文代 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 上級研究員 (00282905)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | テクスチャー / 食品 / 粘性 / 付着性 / 消費者 |
研究実績の概要 |
「粘り」は日本の食文化を象徴するテクスチャーの一つであり、食べ物の「粘り」を表す日本語は他言語に比べて多彩である。しかし、官能評価においても「粘り」に関連する表現は曖昧なまま使われることが多い。本研究では、「粘り」について、具体的な表現(用語)を整理、分類、体系化して、「粘り」の要素を整理することを目的とした。 前年度までに、「粘り」の用語として105語を収集し、粘性(viscosity)と付着(adhesiveness)に大別して整理した。今年度は、「粘り」に対する消費者の意識を考察する手がかりを得るために、「粘り」を表現する用語の認知度を調査した。首都圏で、18歳以上の日本人男女約800人に、web上で調査を行い、各用語について「食べ物の表現だと思うか」「食べ物に粘りがあることを表現する言葉だと思うか」を回答させた。 結果を解析したところ、「粘り」用語105語のうち約65%は、「粘り」の表現としての認知度に年齢層差があり、年齢層が高いほど認知度が高いという傾向がみられた。粘性(viscosity)に関する用語では「とろとろ」「どろどろ」等、付着(adhesiveness)に関する用語では「べたべた」「べとべと」「ねっとり」「ねばねば」等、多くの用語でこの傾向が認められた。この背景には、語彙は年齢とともに累積的に増加すること、高齢者層は若年者層に比べて食経験が豊富であること等が推察された。また、この傾向は「粘り」に特有の現象であるかを確認する必要があるが、語彙の多さはその事象に対する関心の高さを表すことから、「粘り」に対する若年層の関心の低さが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「粘り」を表現する用語を収集、整理し、用語体系を作成することができ、消費者の用語認知度の年齢層差が示された。昨年度、「粘り」の要素が多岐にわたったことから、官能評価や機器測定値での用語説明ではなくアンケート等による用語の分析を行うといった計画変更を行ったが、「粘り」の用語を整理し、食育へも展開するという目的に対しては順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
若年層に「粘り」の用語の認知度の低いものが多かったことから、小学生あるいは中学生の認知状況を確認する。調査結果を踏まえて、小学生あるいは中学生に「粘り」の用語から「粘り」の食文化を考えるきっかけとなるような食育プログラムを検討する。安全性の観点から、体感型の食育プログラムは、映像で見る等のものを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、研究費を効率的に使用して発生した残額(約6万円)であり、特に研究計画の変更は必要ないと考える。次年度、消耗品費として使用する。
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