研究課題
近年、我が国は深刻な高齢化社会を迎えており、さらに喫煙や食生活の欧米化による生活習慣の変化などの影響で、虚血性心疾患、脳血管障害、閉塞性動脈硬化症などの動脈硬化症疾患が増加している。これまで喫煙がアテローム性動脈硬化症の危険因子である事から、ニコチンの動脈硬化性疾患に与える作用が注目されていた。研究代表者は血管平滑筋細胞にニコチン受容体が発現している事、ニコチンが血管平滑筋細胞に直接作用し、脱分化を引き起こすことを発見した。つまり、通常は収縮型として血管の中膜を構成している血管平滑筋細胞がニコチンの刺激により収縮型から遊走・増殖型に脱分化して、中膜の平滑筋層からプラーク部分に遊走・増殖し、その結果、血管が肥厚して狭窄する可能性を報告した。さらに、血管平滑筋の脱分化を引き起こすシグナルとして新しい情報伝達システムとして、血管平滑筋細胞が分泌する小胞のエキソソームが介在する事を見つけた。そこで、脱分化に関与するエキソソームに含まれるマイクロRNAやペプチドを網羅的遺伝子解析あるいはプロテオーム解析により解析を進めている。特に、特定のペプチドの断片がニコチンを暴露した血管平滑筋細胞から見つかっており、バイオマーカーになり得るか否かの検討を特異的な抗体によるウェスタンブロット解析により慎重に進めている。さらに、このニコチンの暴露による血管平滑筋のセルモデルを用いて、食品に含まれる脱分化を抑制する物質の探索を行った。その結果、エイコサペンタエン酸やレスベラトロールにその作用が確認されたが、アスタキサンチンにはその作用は見られなかった。アスタキサンチンは細胞に入りにくいためにリポソームを用いた導入方法も検討している。
2: おおむね順調に進展している
ポリマー法により分離されたエキソソーム中のバイオマーカーの検索を順調に行っている。特定の分子や炎症を抑制する食品成分のスクリーニングも概ね順調に進んでいる。
動物を用いた栄養学的解析を行う予定であるが、その準備が少し遅れている。データをまとめて発表する準備も合わせて行う。
動物実験の準備を行う予定であったが動物の購入が延期となったため。
動物実験における実験に使用予定である。
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糖尿病と妊娠
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