研究課題/領域番号 |
15K00809
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
中村 彰男 群馬大学, 大学院医学系研究科, 講師 (30282388)
|
研究分担者 |
岸 博子 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (40359899)
河原田 律子 (那須律子) 高崎健康福祉大学, 健康福祉学部, 講師 (60383147)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 血管平滑筋細胞 / 動脈硬化性疾患 / タバコ煙 / エクソソーム / 網羅的遺伝子解析 / プロテオーム解析 |
研究実績の概要 |
我々はなぜタバコが動脈硬化性疾患の原因となるのかに関してこれまで血研平滑筋を中心に研究を行ってきた。血管平滑筋細胞のリモデリングに関した研究では遺伝子発現と細胞が独自に分泌する新しい情報伝達システムのエキソソームと呼ばれる小胞体が新しい情報伝達システムとして重要な役割を担っていることが少しづつ明らかにされようとしている。ヒトの血管平滑筋細胞(HVSMC)はコラーゲンファイバーを用いた張力測定実験、ボイデンチャンバーを用いた細胞遊走能の測定実験や細胞増殖能のアッセイ実験などから、ニコチンを暴露することにより、収縮型から増殖・遊走型に形質転換することが明らかになっている。HVSMCにニコチン暴露により変動する遺伝子を網羅的遺伝子解析によって解析すると、明らかに収縮に関する遺伝子群の発現は低下し、増殖に関わる遺伝子が発現していることが明らかになっている。我々はニコチンをHVSMCに暴露した際に細胞から放出されるエクソソームに含まれるマイクロRNAとペプチドをそれぞれ解析した。さらに、エキソームに含まれるペプチドにはミオシンなどユニークな細胞骨格に関わるタンパク質の一部も含まれることが明らかになった。さらに、ニコチンやタバコ煙に含まれるニコチン以外の化学物質のであるアクロレインやメチルビニルケトンなどの高反応性活性カルボニル化合物の影響に関しても同様に研究を行った。これらのタバコ煙に含まれる化合物はHVSMCに急性炎症を惹起する事もわかってきた。エイコサペンタエン酸やレスベラトロールはこれらの炎症を抑制し、エクソソームに含まれる分子を変化させる可能性が示唆された。今後はそれらがどの様に変化していくかに関して明らかにしていきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エキソソームを効率よく分離する手法を確立し、その機能的プロテオーム解析手法を樹立させた。また、エキソソームに含まれるペプチドやマイクロRNAが細胞の状態や暴露する薬物に関して変化することも明らかになりつつあることから概ね研究は順調に遂行されていると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は薬物の暴露により放出されるエキソソームが病態を引き起こす原因となるか否かに関して、培養細胞と動物を用いた実験を計画している。具体的ににはニコチンを暴露した際に放出されるエキソソームをコントロールの細胞培地に加えて、遺伝子がどの様に変動するかを詳細に調べ、実際にラットの血管平滑筋細胞(A7r5)がニコチン暴露により培地中に放出するエキソソームを単離濃縮して、尾静脈投与により投与した際の個体での生理学的な変化を調べる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2018年度より所属機関が変更となり研究設備の移転等により、予定していた動物実験が中断されたために次年度にその実験予定を繰り越したため。
|