研究課題/領域番号 |
15K00812
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
黒瀬 光一 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (30280754)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アレルゲン / 食物アレルギー / 樹状細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では、1)アレルギー発症経路の初期にかかわる抗原提示細胞(樹状細胞)の活性化を指標にして、食物成分の潜在的アレルゲン性の有無を簡便に評価することのできる新規試験系を構築し、2)不明な点の多いアレルゲンによる樹状細胞(DC)の活性化メカニズムを明らかにすることを目的としている。昨年度は、ヒト単球様株化細胞からDCへの効率的・安定的な分化誘導法の検討を行い、Phorbol 12-myristate 13-acetateとInterleukin-4を用いた樹状細胞様細胞(DCLC)への分化法ならびに分化状態の解析法を確立した。今年度は分化させたDCLCのアレルゲン応答性と応答性の指標とするためのマーカー(アレルゲン性マーカー:アレルゲンによる活性化マーカー)の検討を行った。代表的な食物アレルゲンとして、卵白オボアルブミン、牛乳のβ-ラクトグロブリンとカゼイン、マサバのパルブアルブミンを用い、陰性対照として、牛血清アルブミンならびにヒト血清アルブミンを用いた。アレルゲン性マーカーとして、抗原提示細胞の免疫応答における共刺激分子や細胞間接着分子、樹状細胞の成熟化マーカー分子、ケモカインレセプターなどを検討した結果、最終的にはCD54, CD83, CCR7の遺伝子発現誘導を指標にアレルゲン性を評価することにした。その結果、カゼインを除いてはいずれもアレルゲン性マーカー遺伝子の発現が陰性対照に対して有意に誘導されることが明らかとなった。このことから、一部応答性を示さないアレルゲンがあるものの、本試験系により、アレルゲン特異的な応答性を検出することが可能であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はアレルゲン性の評価に用いる樹状細胞様細胞が実際にアレルゲンに対する応答性を示すことと、適切なアレルゲン性マーカー(活性化マーカー)の選定を行う計画であり、これらの課題を達成できたと考えた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、試験するアレルゲンの種類を増やし、アレルゲン性評価基準値の検討ならびにアレルゲン性評価法の最適化を行い、標準的な試験法を確立したいと考えている。また、樹状細胞のアレルゲンによる活性化メカニズムの一端を知るために、アレルゲンのどのような構造を樹状細胞様細胞が認識しているのかをアレルゲン変異体のリコンビナントタンパクを作製し、解析する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
主として、旅費、人件費・謝金の支出がなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の使用計画に大きな変更はなく、使用費目は消耗品、学会参加のため旅費、及びその他(論文投稿料等)であり、本研究遂行において必須の経費である。消耗品に関しては、実験のための試薬や培地とチューブやプレートなどの実験器具の購入に充てる。
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