研究実績の概要 |
本研究では、1)アレルギー発症経路の初期にかかわる抗原提示細胞(樹状細胞)の活性化を指標にして、食物成分の潜在的アレルゲン性の有無を簡便に評価することのできる新規試験系を構築するとともに、2)不明な点の多いアレルゲンによる樹状細胞(DC)の活性化メカニズムを明らかにすることを目的とした。 昨年度までに、単球様細胞であるTHP-1細胞をPhorbol 12-myristate 13-acetate(PMA)とInterleukin-4(IL-4)を用いて樹状細胞様細胞(DCLC)へ分化させ、アレルゲンマーカーとしてCD54, CD83, CCR7の遺伝子発現誘導を指標にして食物アレルゲンのアレルゲン性評価が可能であることを示した。本年度は、さらにアレルゲン応答性の高い細胞の作製をめざし、THP-1からDLCLへの分化誘導法の改良を検討した。DCLCへの分化に関して、PMAとIL-4の処理時間、処理開始のタイミングを変え、アレルゲン応答性を調べたところ、処理時間を6日から3日に短縮することが可能であることが分かった。また、PMAとIL-4の処理時間と処理開始のタイミングについては、同時添加による3日間処理(標準的処理)との差は見られなかった。 一方、THP-1細胞のアレルゲンによる活性化メカニズムに関しては、パターン認識受容体(PRRs)の関与の有無を確かめるために、代表的なPRRsであるToll様受容体の一つTLR4のリガンドであるリポポリサッカライド(LPS)をTHP-1細胞に暴露し、上述のアレルゲンマーカーの発現変動を調べた。その結果、いずれのマーカーもLPSによる発現誘導がみられた。このことから、現時点では詳細なメカニズムは不明であるが、抗原提示細胞のアレルゲン認識にTLRs等のPRRsの関与する可能性が示唆された。
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