研究課題
これまでに、ブロッコリースプラウト抽出物が高脂肪食により肥満させたマウスおいて以下の効果を示すことを見出した。1.脂肪細胞のミトコンドリアに存在し、エネルギーを熱に換えて放散させる分子である脱共役タンパク質1(Uncoupling protein-1, Ucp-1)を増加させ、エネルギー消費の増加と脂肪の燃焼をもたらす脂肪の褐色化という現象を促進する。2.スルフォラファンは、内毒素(LPS、エンドトキシン)を過剰産生するデスルフォビブリオ科の腸内細菌の増殖を抑制しており、血液中の内毒素(LPS)を低下させ、代謝性エンドトキシン血症を改善する。3.遺伝的にNrf2を欠損したマウスにおいては、上記1、および2の効果は認められなかったことから、ブロッコリースプラウト抽出物による肥満抑制の標的分子としてNrf2が重要であることが明らかとなった。4.さらに、ブロッコリースプラウト抽出物は特に肝臓において炎症誘導性M1マクロファージの蓄積を抑制し、脂肪肝、慢性炎症、インスリン抵抗性の誘導を抑制することを明らかにした。以上から、既に知られていた解毒・抗酸化作用に加えて、ブロッコリースプラウト抽出物には、①脂肪細胞の褐色化促進によりエネルギー消費を増大させ、肥満を抑制する作用、②高脂肪食による肥満型腸内細菌叢を改善し、代謝性エンドトキシン血症を抑える作用という2つの新たな作用を明らかにし、それらが、炎症やインスリン抵抗性を改善させるという生活習慣病の予防につながる波及効果があることを明らかにした。今後は、臨床的に、ブロッコリースプラウト抽出物の肥満予防効果、炎症やインスリン抵抗性に対する有効性と安全性を評価することで、エネルギー消費を増加させ、腸内環境を改善する機能性食品としての役割が期待される。
2: おおむね順調に進展している
ほぼ当初の計画通りに研究を実施している。これまで得られた研究成果については、国内外の複数の学会で発表し、投稿した論文は受理済みである。
これまでにブロッコリースプラウト抽出物による肥満予防効果をモデルマウスにおいて示すことができた。今後は、ブロッコリースプラウト抽出物の治療応用を念頭に置き、既に肥満となったマウス(高脂肪食誘導性、及びob/obマウス等の遺伝子変異型肥満モデル)において、ブロッコリースプラウトがエネルギー代謝、腸内細菌叢、インスリン感受性にどのような影響を与えるかを明らかにしていきたい。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
Diabetes
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.2337/db16-0662
http://www.kanazawa-u.ac.jp/rd/43969