研究実績の概要 |
これまでに,ビタミンE同族体(トコフェロール(Toc),トコトリエノール(T3))は極性制御分子aPKC, Par-3の傷に面した細胞膜への局在化を促進することが明らかとなった. aPKCとPar-3がビタミンE同族体(α-Toc, γ-T3, δ-T3)の創傷治癒促進作用に関与することを確認するために,aPKC阻害剤処理とaPKC, Par-3のノックダウンの創傷治癒に対する影響を調べた.aPKC阻害剤処理,aPKC, Par-3のノックダウンのいずれもビタミンE同族体(α-Toc, γ-T3, δ-T3)の創傷治癒促進作用を有意に阻害した.この結果より,aPKC, Par-3がビタミンE同族体(α-Toc, γ-T3, δ-T3)の創傷治癒促進作用に重要な役割を果たしていることが確認された. 次に,aPKC,Par-3の細胞形質膜へのリクルートの上流シグナルを探索する目的で,aPKCのリン酸化に関わることが知られているPI3キナーゼ(PI3K)シグナルに対するビタミンE同族体(α-Toc, γ-T3, δ-T3)の作用について検討した.Aktのリン酸化を指標としてPI3Kの活性化を調べた結果,ビタミンE同族体(α-Toc, γ-T3, δ-T3)は細胞の極性化に伴ってPI3Kシグナルの活性化を誘導することが明らかとなった.またその作用はT3の方がα-Tocよりも強かった.PI3K阻害剤処理によりビタミンE同族体による細胞の極性化及び創傷治癒促進作用は抑制された. 以上の結果より,ビタミンE同族体(α-Toc, γ-T3, δ-T3)はPI3K/aPKCシグナルの活性化を伴った細胞の極性化を誘導し,創傷治癒過程を促進していると考えられた.
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