ここ数年,個人の食習慣が強く反映される酸蝕症が齲蝕・歯周病に次ぐ「第三の歯科疾患」として注目されている。わが国における酸蝕症の認知度は比較的低く,その実態把握は散見する程度であり,特に小児期における報告はほとんど無い。このような状況を踏まえ,小児における齲蝕・酸蝕症の食品摂取パターンの面から分析し,以下の結果を得た。 1.1~4歳児において齲蝕発症および歯垢構成細菌の酸産生能に最も影響した食関連因子は「間食でのショ糖摂取頻度」であった。 2.摂取パターン(食事中・食間)によって齲蝕発症および歯垢構成細菌の酸産生能に有意差を認めた飲料は「清涼飲料水」であり,「食間」での摂取が有意に高値であった。 3.3~6歳児の乳歯において酸蝕症は咬耗・磨耗との鑑別が困難であるため,tooth wearとして扱わざるを得なかった。 4.1日あたりの歯磨き回数と齲蝕経験歯数,あるいはtooth wear歯数に有意な相関関係は見られなかった。tooth wearの重症度と関連性を示した歯磨きのタイミングは「昼食後」であった。酸性飲食物の摂取習慣のうち,齲蝕経験歯数と有意な相関を示したのは「夏の間,熱中症予防のためにスポーツ飲料を頻繁に摂取」であった。tooth wearの重症度と有意な相関を示したのは「酸性飲料を哺乳瓶で摂取」であった。齲蝕経験歯数と摂取頻度に有意な正の相関を示した食品は,炭酸飲料,清涼飲料水,チョコレート,キャラメル,ポテトチップス,ポップコーン,ガム(砂糖入り),ようかんであった。tooth wear歯数と摂取頻度に有意な正の相関関係を示した食品は,炭酸飲料であった。 5.炭酸飲料は,齲蝕と酸蝕症の両者について高リスクの飲食品であることが示唆された。
|