研究課題/領域番号 |
15K00818
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
小橋 基 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (80161967)
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研究分担者 |
島谷 祐一 東京都市大学, 工学部, 准教授 (20154263)
美藤 純弘 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (20240872)
松尾 龍二 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30157268)
藤田 雅子 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助手 (40156881)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | GLP-1 / 嚥下 / exendin / 延髄 / 上喉頭神経 / ラット / 最後野 / 孤束核 |
研究実績の概要 |
延髄背側部へのグルカゴン用ペプチド-1(GLP-1)投与が、上喉頭神経電気刺激により惹起された反射性嚥下にどのような作用をおよぼすかを、ウレタン・クロラロース麻酔下のSD系雄性ラットを用いて検討した。嚥下は上喉頭神経の中枢端を電気刺激することにより惹起した。嚥下運動は舌骨上筋群の筋電図波形と目視により同定した。電気刺激中に生じた嚥下回数を計測し、嚥下頻度とした。刺激開始時点から初回嚥下筋電図のピークまでの時間を計測し、初回嚥下潜時(嚥下潜時)とした。この嚥下頻度及び嚥下潜時を解析に用いた。 当初の計画ではGLP-1を第四脳室に滴下投与することによりその作用を検討する予定であったが、滴下では作用が認められなかったので、延髄内微量注入法によりGLP-1を投与した。迷走神経背側複合核群の正中部及び外側部へのGLP-1微量注入による効果を調べた。正中部GLP-1注入により、嚥下頻度の減少と嚥下潜時の増加が観察された。一方、嚥下起動神経群が含まれる外側部注入では、嚥下頻度及び嚥下潜時に変化はみられなかった。したがって、GLP-1は正中部に作用して反射性嚥下を抑制すると考えられる。 GLP-1受容体アンタゴニストであるエキセンディン(5-39) の前投与によりGLP-1の反射性嚥下抑制作用が消失した。この結果により、GLP-1の反射性嚥下抑制作用は溶媒の効果ではなくGLP-1受容体を介した応答であることが示された。 本年の研究により、GLP-1は嚥下起動神経群の存在する延髄背側部よりもむしろ延髄正中部のGLP-1受容体を介して反射性嚥下を抑制することが明らかになった。延髄正中部には最後野、孤束核交連部及び孤束核の内側核が含まれる。これら3部位のいずれにGLP-1が作用し反射性嚥下を抑制するのかまで含めて次年度の研究を行いたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究は計画通り進捗している。本年度研究結果を英文雑誌に投稿する予定であったが、作成に手間取り英文雑誌への投稿がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要で示したように、GLP-1は延髄正中部に作用し反射性嚥下を抑制した。延髄正中部には最後野,孤束核交連部及び孤束核の内側核が含まれる。これら3部位のいずれにGLP-1が作用し反射性嚥下を抑制するのかを明らかにするため,GLP-1の反射性嚥下抑制作用に及ぼす延髄部分破壊の影響を調べる。明らかとなった作用部位に複数用量のGLP-1を微量注入することにより、用量依存性カーブを記述し至適用量を決定する。 GLP-1は摂食を抑制する作用をもつ。摂食調節の本質的な中枢は視床下部外側野である。視床下部外側野が延髄で生じるGLP-1由来の応答にどのように関与するかについて明らかにするために、視床下部外側野のみで産生されて延髄を含む広範囲な領域に神経分泌されるオレキシンを投与し、GLP-1による応答がどのように変化するかを明らかとする。この研究は、摂食抑制作用を持つGLP-1に摂食亢進作用を持つオレキシンがどのような関与をするか明らかにする意味でも興味深い。これらの研究により、摂食亢進と摂食抑制がどのように拮抗的に嚥下・食物受け入れに作用するか明らかとなる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度研究結果を英文雑誌に投稿する予定であったが、作成に手間取り投稿がやや遅れているため、英文校閲料、投稿料、印刷費等が使用できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
英文論文原稿を作成し投稿するための、英文校閲料、投稿料、印刷費等に使用予定。
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