研究課題/領域番号 |
15K00822
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
今大路 治之 (中山治之) 香川大学, 医学部, 助教 (80294669)
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研究分担者 |
桑原 知巳 香川大学, 医学部, 教授 (60263810)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヒスタミン / Raoultella / histidine decarboxylase / crp / fis / ヒスタミン食中毒 / 腸内菌 |
研究実績の概要 |
糞便メタゲノム解析に用いた乳幼児糞便から分離されたRaoultella ornithinolytica AA097株におけるヒスタミン産生制御メカニズムを解明するために、mariner Tn挿入変異株ライブラリーを用いた大規模スクリーニングにより、ヒスタミンの産生制御に関わる遺伝子群を網羅的に探索した。その結果、ヒスタミン産生能が弱まった株としてcrp (cyclic AMP receptor protein) 変異株およびfis (factor for inversion stimulation) 変異株を同定した。次に、sacB遺伝子を用いたcounter selection法を用いてcrp欠失株およびfis欠失株を作製しヒスタミン産生能を調べたところ、両遺伝子欠失株は野生株と比較して著しくヒスタミン産生能が減弱していた。野生株を0.1%グルコース添加したM9 + 1% histidine培地で培養するとヒスタミンの産生が全く認められず、またグルコース存在下ではhistidine decarboxylase (hdc) 遺伝子発現も著しく抑制された。以上より、R. ornithinolyticaにおけるヒスタミン産生は、CRPが関与するカタボライト抑制機構に加えてFisによっても正に制御されていることが示唆された。 また、CRPおよびFisがダイレクトにhdc遺伝子の発現を制御しているのかを検討するために、CRPおよびFisタンパク質をGST融合蛋白として発現精製し、hdcプロモーター領域への結合性をゲルシフトアッセイで調べた。その結果、両タンパク質ともhdcプロモーター領域への結合が認められた。以上より、hdc遺伝子の発現制御にCRPおよびFisが直接的に関わっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究はおおむね順調に進んでおり、ほぼ計画通りの進捗具合である。本年度の研究実績によりこれまで未解明であった細菌におけるヒスタミン産生制御機構の一端を明らかにすることができた。特に、CRPが関与するカタボライト抑制機構によってヒスタミンの産生が制御されているということは特筆すべき新たな発見であった。また、R. ornithinolytica におけるmariner Tnを用いたランダムmutagenesis法の有用性を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度計画に一部含まれている宿主環境中でのヒスタミン産生性の解析を今年度行う。R. ornithinolyticaのヒスタミン産生能がマウス腸管環境中で認められるか否かを確認する。R. ornithinolyticaのノトバイオートマウスを水投与群および1% histidine投与群に分け、経時的に回腸・空腸・大腸内容物中のヒスタミン量をHPLCを用いて定量する。次年度の研究計画である腸内菌由来ヒスタミンによる宿主―細菌クロストークの解明についても計画内容通り遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ概ね計画通りに支出できでいるが、旅費の支出が若干少なかったことがあげられる。
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次年度使用額の使用計画 |
これらの金額の使用計画としては、今後の研究の推進方策に沿った消耗品等の支出、および旅費の一部に使用する。
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