研究課題/領域番号 |
15K00824
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
望月 聡 大分大学, 教育学部, 教授 (80210087)
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研究分担者 |
山田 耕史 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 准教授 (00253469)
小田 裕昭 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (20204208)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 二枚貝 / 脂質 / コレステロール / セラミドリン脂質 |
研究実績の概要 |
私たちはシジミからコレステロール低下作用をもたらす新規機能性成分を見いだしており、動脈硬化症や脂肪肝を予防する新規脂溶性化合物を同定して、そのメカニズムを解明して、その誘導体の合成を行うことを考えている。さらに、シジミのタンパク質にも脂質代謝改善効果があることを示しており、そのメカニズムを検討した。 シジミタンパク質画分は、血清コレステロール低下作用を示すが、その作用機序を検討するため、血清コレステロール低下作用を有する大豆タンパク質と小麦グルテンとを比較した。シジミタンパク質は大豆タンパク質と同様に、コレステロール異化代謝関連遺伝子の発現を亢進することが明らかとなった。シジミ脂質画分の機能性成分の探索において、分画した脂質画分に新規機能性成分が考えられたので、天然物化学チームが機能性画分をさらに分画し、動物実験チームがコレステロール低下作用を認めた。その機能性画分をさらに細かく分画した画分にもコレステロール低下作用が観察された。新規機能性成分の作用機序を検討するため、肝臓におけるコレステロール代謝を検討した。細かく分画するにつれて、コレステロール異化代謝に及ぼす影響は小さくなり、これまで考えていたコレステロール異化代謝の他に作用点がある可能性が示唆された。 シジミに含まれる血中脂質低下作用を有する脂溶性成分の同定とその作用機序の解明を行うことを目的として、シジミ抽出物の脂溶性画分から活性成分の分離精製を行い、これまでにセラミドリン脂質成分を分離している。更に、その詳細な機能性を明らかにするために、そのアナログ体の全合成を行っている。 シジミ以外の二枚貝としてカキの作用について検討を行ったところ、シジミとは異なり、血清コレステロール低下作用などの脂質代謝改善効果は認められなかった。このことは、貝の種類によって脂質代謝に及ぼす影響が異なることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シジミのタンパク質画分の作用機序を遺伝子レベルで明らかにすることができた。 脂質画分の機能性成分の同定まであと一歩まで来ている。細かくした脂質画分の分子作用機序を検討したが、分画とともにコレステロール異化代謝に及ぼす影響が小さくなってしまった。そのため新規の作用機序も考えられたが、新規化合物が同定された後に、その化合物の用量依存性を調べる中で、作用機序を決める戦略を考えている。 現在、セラミド部分の合成には成功しているが、そのリン酸化反応が困難であり、反応条件の検討を行っている。特に、セラミド1位の1級水酸基のみをリン酸化するルートで、主に、反応温度と反応溶媒の検討を行ったが、最適な条件を得ることができなかった。そこで、基質を天然由来のセラミド成分に変更し、充分量確保した後、反応温度、反応溶媒などの種々の反応条件検討を行っている。 二枚貝以外の水生動物に含まれているセラミドについてコレステロール低下作用を検討したところ、効果が認められた。セラミドの一定の構造が影響している可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
シジミのタンパク質画分にどのようなタンパク質が含まれているのかなどは全くわかっていないため、SDS-PAGEや2次元電気泳動によりタンパク質を分離同定し、ゲル濾過、イオン交換樹脂などのカラムを通して分離して責任タンパク質ならびに、ペプチドの同定を可能にする。 脂質画分の新規機能性成分の作用メカニズムについては、その新規化合物が同定された後に、その化合物の用量依存性を調べる中で、分子作用機序を決める戦略を考えている。 天然由来のセラミドを用い、リン酸化の反応最適条件を明らかにしたのち、セラミドのリン酸化とアミド化を行い、天然物のアナログ体の全合成を達成すると共に、脂溶性画分から更なる新規活性成分の分離を試みる。また、他の二枚貝由来の新規機能性脂質の検索を行う。 二枚貝以外由来の水生動物に含まれるセラミドについて、さらに対象を広げてコレステロール低下作用の有無を検討し、活性が認められたセラミドについてはその構造解析を行うことによって、コレステロール低下作用をもたらす物質構造の共通性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
合成された活性物質を動物に投与して、その効果を明らかにする計画であったが、実験に必要な活性物質の量が確保できなかったため、このことに関する実験は平成29年度に実施することとしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
動物実験に必要な物品費として使用する。
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