昨年度は、肥満抑制におけるビオチンの新たな作用機序として甲状腺機能亢進とそれに伴うエネルギー代謝亢進を推察する結果を得た。しかし、これらビオチンの効果について高脂肪食負荷による肥満への進展抑制は検討したものの、肥満症状からの肥満改善については検討していない。本年度は、高脂肪食誘導性肥満マウスを用いて肥満改善におけるビオチンの効果を検討した。さらに、代謝亢進系ホルモンの血中濃度と脂質代謝関連物質の測定に加え、マウスの行動量を測定することでビオチンによる自発性活動量の変化を評価し、体重増加抑制効果におけるビオチンの作用機序について多面的に検討した。その結果、体重、副睾丸周囲脂肪重量、肝臓脂質含量は、ビオチンにより有意な低値を示し、肥満マウスにおいても脂質代謝亢進を介した体重増加抑制効果が明らかにされた。また、肝臓及び血中のビオチン含量はビオチン投与により有意に増加し、特に血中濃度は非投与の45倍まで増加した。以上のことから、ビオチンの体重増加抑制効果は、高濃度の血中ビオチン濃度によって誘導されることが強く示唆された。一方、マウスの行動解析では、撮影用のケージに入れた直後15分と、その後の30分間の総移動距離にビオチンの効果は認められず、sniffing回数においても有意差は認められなかった。以上の結果から、ビオチンによる肥満改善は、自発的活動量の増加には因らず代謝系亢進に起因することが示唆された。
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