研究課題/領域番号 |
15K00827
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
守田 昭仁 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (40239653)
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研究分担者 |
三浦 進司 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (10342932)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 再摂食 / SREBP-1c / フラクトース 6-ホスフェート / UDP-GlcNAc / LXR / 高糖質食 / ホスファチジルコリン / 脂肪酸分子種 |
研究実績の概要 |
日常生活でも、夕食摂取後から絶食状態で、朝食時に再摂食することになる。この再摂食時の糖・脂質代謝の変動は大変興味深い。また、糖質過剰食や脂質過剰食を摂取した場合には脂肪肝が形成する。このような日常生活で生じやすいケースで、糖質代謝の中間体が脂質代謝を制御し、脂質代謝の中間体が糖質代謝を制御している可能性を、以下の二つの課題で検討した。 検討課題1 「F6P量増加が脂質代謝を制御している」ことの検証 予備検討で、絶食後再摂食で肝臓グリコーゲンの貯蔵が充満し、その後に脂肪酸合成を促進する転写因子SREBP-1cの発現が上昇し、肝臓に脂肪が蓄積することが判明していた。本年度は、絶食後再摂食で肝臓グリコーゲンが蓄積すると、摂食で取り込まれるグルコースが代謝中間体G6PとF6Pとして蓄積すること、F6PからUDP-GlcNacを合成する経路の酵素の遺伝子発現が増加すること、SREBP-1cの発現を制御している転写因子LXRがUDP-GlcNAcによりGlcNAc化されることを明らかにした。 検討課題2 糖質過剰摂取で変化する特定脂質分子種の検索 高糖質食や高脂質食を長期間摂取すると非アルコール性脂肪肝(NAFLD)が発症する。このようなNAFLD発症原因を特定できる脂質代謝の中間体を、血液中のリン脂質の中で最も多いホスファチジルコリン(PC)に着目し、その分子種をリピドメタボロミクスの手法で網羅的に探索した。その結果、高糖質食と高脂質食を8週間摂取させたマウスでは肝障害の指標ALTとASTが上昇し、中性脂肪が蓄積した。さらに、血液中のPCの脂肪酸組成は、高糖質食では(16:0/16:1)(16:0/18:1)(18:0/18:1)が増え、他方、高脂質食では(16:0/22:6)(18:0/22:6)(18:0/20:3)(18:0/20:4)が増えており、NAFLD発症原因の違いが判別できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検討課題1 「F6P量増加が脂質代謝を制御している」ことの検証 糖質代謝中間体濃度を測定し、その代謝中間体が脂質代謝に及ぼす影響を推察できるところまで到達し、最重要課題に関しては大きな進捗が得られた。しかし、糖質過剰摂取時の脂肪酸合成の亢進やグリコーゲン貯蔵速度は測定できておらず、また、培養細胞を用いた転写調節機構の解析も十分ではなかった。
検討課題2 糖質過剰摂取で変化する特定脂質分子種の検索 糖質過剰摂取で変化する脂質分子種として、7種類のホスファチジルコリンを見出すことができ、十分な進捗と考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
検討課題1 「F6P量増加が脂質代謝を制御している」ことの検証 F6Pが引き起こす肝細胞内での現象の作用機序を詳細に解析する。特に、培養細胞でLXRの働きを検証し、マウスでの現象を培養細胞で再現できるかを確認するとともに、より詳細な機構を解析する。さらに、培養細胞の成果が実際にマウスで生じるかの追認実験を行う。 検討課題2 糖質過剰摂取で変化する特定脂質分子種の検索 脂肪肝に由来する特定分子種の簡易定量系を確立し、その分死守の分子シグナルとしての役割を解析する。また、特定分子種を用いて、検討課題1と2の垣根を取り払い、相互に関連しているか否かを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、基本的な現象の再確認ならびに脂質代謝中間体の特定分子種の絞り込みに注力したため、ルーティンの実験が多く、消耗品の使用割合が少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度で確認された現象ならびに特定分子種を活用し、今後様々な作用機構を詳細に解析していく予定で、消耗品の使用割合が増加すると予想される。
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