研究課題
私たちはな絶食・再摂食を繰り返している。この時の糖・脂質代謝の変動は大変興味深く、また、糖質過剰や脂質過剰摂取の場合には脂肪肝が形成される。このような日常生活で糖質の中間体が脂質代謝を制御し、脂質代謝の中間体が糖質代謝を制御している可能性を次の二つの課題で検討した。検討課題1「F6P量増加が脂質代謝を制御している」ことの検証再摂食時の食餌中の糖質の違いの影響を、グルコース投与群とフラクトース投与群で解析した。グルコース投与群では血中グルコースの増加、インスリンの増加に伴いSREBP-1cの発現が増加した。他方、フルクトース投与群では血中インスリン濃度が増加せずにSREBP-1cの発現が増加した。検討課題2 糖質過剰摂取で変化する特定脂質分子種の検索高糖質食や高脂質食摂取で発症する脂肪肝を特定できる脂質代謝の中間体として血液中のホスファチジルコリン(PC)の分子種をリピドメタボロミクスの手法で網羅的に探索した。高脂肪食摂取では血漿中のPC (16:0/16:1)、PC (16:0/18:1)が減少した。ヒトにおいても、これらの2分子種が高脂肪食摂取で増加した。他方、高糖質食摂取の肝臓では、stearoyl-CoA desaturase (SCD)1の発現増加で、パルミトオレイン酸(16:1)とオレイン酸(18:1)の生合成が促進され、さらに、lysophosphatidylcholine acyltransferase (LPCAT) 4の発現増加で、16:1-CoAおよび18:1-CoAのLyso-PC(16:0)への取り込みが促進された。これらのことは、高糖質食でPC (16:0/16:1)、PC (16:0/18:1)の生合成が高まったことを示唆する。以上のことから、高糖質食では血漿中のPC (16:0/16:1)、PC (16:0/18:1)が増加し、高脂肪食では減少することが判明した。
2: おおむね順調に進展している
検討課題1「F6P量増加が脂質代謝を制御している」ことの検証フラクトース投与でインスリン非依存性のSREBP-1c発現増加を認めたが、その機構の解明には至っていない。検討課題2 糖質過剰摂取で変化する特定脂質分子種の検索極めて順調で、特異的なバイオマーカーとなるPC (16:0/16:1)、PC (16:0/18:1)を見いだし、高糖質食と高脂質食に起因する血漿中PC (16:0/16:1)、PC (16:0/18:1)量変動の機構の一端まで解明できつつある。
検討課題1「F6P量増加が脂質代謝を制御している」ことの検証転写因子LXRの免疫沈降法を確立し、培養細胞ならびにマウスにおけるLXRの翻訳後修飾を解析する。また、インスリン非依存的なSREBP-1c発現の制御機構を解析する。検討課題2 糖質過剰摂取で変化する特定脂質分子種の検索病態モデルマウスにおける血漿中のPC (16:0/16:1)、PC (16:0/18:1)の変動を調べる。また、食肉中のリン脂質量を網羅的に解析し、食肉のおいしさとの関連や、それらを摂取した場合の生体における影響を調べることで、食肉の有効活用に結びつける。
検討課題1の進捗が悪く、消耗品代が少なくてすんだ。
検討課題1の進捗を図るべく、消耗品代として使用する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (8件)
Metabolism
巻: 65 ページ: 1646-1656
Glycerol-3-phosphate dehydrogenase 1 deficiency induces compensatory amino acid metabolism during fasting in mice.
脂質生化学研究
巻: 58 ページ: 51-52