研究課題/領域番号 |
15K00828
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
海野 けい子 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (10106437)
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研究分担者 |
木村 洋子 静岡大学, 農学部, 教授 (80291152)
住吉 晃 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (80612530)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ストレス / 糖尿病 / 脳老化 / テアニン / カテキン / 認知症予防 |
研究実績の概要 |
高齢社会となったわが国において、老化の予防は認知症対策の重要な柱となる。一方、脳の老化を促進することが疫学的に明らかになったものとして、「ストレスの蓄積」ならびに「糖尿病の関与」がある。本研究は、われわれがこれまでにストレスならびに糖尿病に対する予防効果を明らかにしてきた緑茶成分であるテアニンおよびカテキンに着目し、脳の老化予防における作用機構解明ならびに食品成分の脳に対する機能性解明をめざし、平成27年度に下記を実施した。 1. マウスに縄張り意識を確立させた後に対面飼育を行うことにより、マウスに社会心理的ストレスを負荷した。これらのマウスについて、ex vivo MRI による脳の形態的変化の測定を行った結果、ストレス負荷1ヶ月の時点で脳の容積が有意に低下し、更に加齢に伴い脳の萎縮が進行することが明らかとなった。一方、ストレス負荷時にテアニンを摂取していたマウスでは脳萎縮が改善することが明らかとなった。 2. テアニンを摂取していたマウスでは、脳内に確かにテアニンが取り込まれているとともに、興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸が減少し、抑制性のGABAが増加していることを見出した。これらのことから、テアニンが脳内のグルタミン酸代謝に関与していることが考えられた。 3. テアニンの作用はカフェインによって打ち消されることから、カフェイン量を減少させた低カフェイン緑茶を作製しストレス軽減効果を検討した結果、マウスならびにヒトにおいて有意なストレス抑制効果が認められた。 4. 老化促進モデルマウス(SAMP8)では、高脂肪食を摂取させることにより脳萎縮ならびに脳機能の低下が有意に促進したが、カテキン摂取によりそれらが抑制されることが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一部予定通り行えなかった項目もあったが、一部は28年度に行う予定であった実験を前倒しで行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
脳老化を促進する要因として「ストレスの蓄積」ならびに「糖尿病の関与」に焦点を当て、脳老化促進の機構解明ならびに食品成分の機能性解明をめざし、下記の項目を実施する。 1. テアニンの抗ストレス作用について、他の緑茶成分と一緒にテアニンを摂取した場合に十分なストレス軽減効果が得られるためにはどのような組成が適しているのか、脳内での作用機構を含め検討する。また中高齢者等を対象として、低カフェイン緑茶のストレス軽減効果を検討する。 2. ストレスを負荷したマウスについて、脳内での遺伝子発現の変化、ならびにテアニンの作用機構についての解明をめざし、脳内の遺伝子発現の変化について解析を行う。また、ストレス負荷が長期間となった場合の血中のグルココルチコイドの概日リズムの変化を測定する。 3. 高脂肪食摂取ならびにカテキン摂取により変化する脳内遺伝子を探索する。 4. マウスにおけるストレス負荷実験系は雄マウス同士の縄張り意識を利用したものであるが、ストレス感受性における性差を検討する上で、雌マウスに適したストレス負荷実験系を構築する。
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