研究課題/領域番号 |
15K00829
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
福渡 努 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (50295630)
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研究分担者 |
大貫 宏一郎 近畿大学, 工学部, 准教授 (50378668)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アミノ酸 / 脳神経科学 / 代謝 |
研究実績の概要 |
トリプトファン代謝産物キヌレン酸が脳内で増加すると,神経伝達物質の放出抑制を介して高次脳機能を低下させる.本研究では,キヌレン酸産生機構がアミノ酸代謝と関連することに着目し,アミノ酸代謝制御によってキヌレン酸を介した高次脳機能を調節することを目的としている.平成28年度は,キヌレン酸産生異常を招く因子を明らかにすることを目的として,疾病モデル動物におけるキヌレン酸代謝動態の解析に取組んだ. 肝障害モデル動物において肝臓のトリプトファン代謝が抑制されることを研究代表者は見出していることから,末梢のトリプトファン代謝変動が脳キヌレン酸濃度におよぼす影響とその作用機序について検討した.ラットにチオアセトアミドまたは四塩化炭素を腹腔内投与し,急性肝障害を発症させると,いずれの薬剤投与によっても脳内のキヌレニンおよびキヌレン酸濃度が対照群よりも高値を示した.これは,トリプトファン異化代謝経路の初発酵素であるトリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ活性が肝障害によって低下したため,非肝臓組織におけるトリプトファンからのキヌレニン産生が亢進し,そのキヌレニンが血中に放出された結果,血中キヌレニン濃度が上昇し,それに伴って脳によるキヌレニン取込みが亢進したためであった.平成27年度の研究成果より,血中キヌレニン濃度の上昇に対してLATの基質となるアミノ酸摂取が脳によるキヌレニン取込みを抑制することを示している.したがって,肝障害による脳内キヌレン酸濃度上昇を抑制するうえでLATの基質となるアミノ酸摂取が有効となる可能性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,大きく分けて,1) キヌレン酸産生の作用部位と制御機構の解明,2) キヌレン酸産生を亢進する因子の解明,3) 食餌によるキヌレン酸産生の抑制とそれに伴う高次脳機能の調節,から構成される.計画通り,平成27年度に1) を,平成28年度に2) を明らかにすることができた.
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今後の研究の推進方策 |
1. キヌレン酸産生を亢進する因子を解明するために,引き続き,疾病モデル動物における代謝動態の解析を行う.脳内キヌレン酸濃度に肝臓が関わっていることから,平成29年度は肝障害モデルとして非アルコール性脂肪性肝炎モデル動物を用いて,末梢キヌレニン合成,脳キヌレン酸産生の変動とその作用機序を明らかにする.さらに,本研究で見出したLATの基質となるアミノ酸が疾病によるキヌレン酸産生を抑制するか,明らかにする. 2. キヌレン酸産生抑制作用をもつアミノ酸を高濃度に含む食餌をマウスに与え,行動実験により高次脳機能の低下に対する影響を評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に,機器類の維持管理に係る費用および動物実験に係る人件費が想定よりも少額となったため,平成28年度に次年度使用額が生じた.予定通り,平成28年度の次年度使用額の一部を平成28年度の研究費に充てた.残りを平成29年度の研究費に充てる予定であったため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額が発生したため,より詳細な研究を実施することが可能となった.実験に要する物品費および人件費に次年度使用額を充てる予定である.
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