研究実績の概要 |
我が国には、糖尿病あるいはそのリスクを保有する者が2,000万人を越えて存在する。我々はゼラチン加水分解物の摂取により、糖尿病モデルラットの病態進行が抑制される可能性を見出した。現在、臨床応用されている糖尿病患者用の経腸栄養剤には、タンパク質成分の機能性に焦点をあてた製品は存在しない。本研究では、ゼラチン加水分解物摂取が糖尿病モデルラットの病態に及ぼす影響を検討し、その作用機構を解明するとともに、活性画分を濃縮することを目的とする。 本研究では、ストレプトゾトシン投与による糖尿病モデルラットを用いて研究を実施してきた。そしてこれまでの研究から、ゼラチン加水分解物はストレプトゾトシンの毒性に対する膵臓保護作用を有する可能性を見出した。本年度の研究では、糖尿病モデルラットの膵臓ランゲルハンス島を分離し、Total RNAを抽出して、炎症関連分子の遺伝子発現量について検討したところ、NF-kB、IL-1β、TNF-αの発現が、ゼラチン加水分解物摂取によって抑制されることを見出した。そこで次に、膵臓保護作用が報告されているインクレチンGLP-1の分泌量について検討した。血流を遮断しないように門脈内へカテーテルを留置した健常ラットに、カゼインあるいはゼラチン加水分解物を強制胃内投与し、15分後に門脈血を採取した。血漿を分離し、ELISAキットを用いてTotal GLP-1量を測定したところ、カゼイン投与では変化は認められなかったが、ゼラチン加水分解物投与では、有意なGLP-1濃度の上昇が認められた。これらの結果から、ゼラチン加水分解物には、ストレプトゾトシン糖尿病モデルラットの膵臓ランゲルハンス島における炎症反応を抑制する作用があり、その作用機構の一部には腸管からのGLP-1分泌の促進が関与している可能性が示唆された。
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