研究課題/領域番号 |
15K00833
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研究機関 | 高知県立大学 |
研究代表者 |
鈴木 麻希子 高知県立大学, 健康栄養学部, 准教授 (60437001)
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研究分担者 |
田中 守 高知県立大学, その他部局等, 助教 (00612350)
沼田 聡 高知県立大学, その他部局等, 助教 (10565857)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 免疫複合体転移酵素免疫測定法 / 卵白アレルゲン / L-PGDS |
研究実績の概要 |
免疫複合体転移酵素免疫測定法の開発には、抗lipocalin-type prostaglandin D synthase (L-PGDS)抗体のペプシン処理により、Fc部を切断し、Fab’を得る必要がある。過去に調製し、残っていたlipocalin-type prostaglandin D synthase (L-PGDS) に対する4種のモノクローナル抗体(5E, 3B, 2A, 12F)について、まず、予備的にペプシン処理を行った。その結果、2A, 12FはFab’が分解されてしまい、そのまま用いること困難であった。そこで、抗L-PGDS抗体 (5E, 3B) の大量調製を行うこととした。各ハイブリドーマクローンを常法に従って、Balb/cマウスにそれぞれ投与し、腹水を得た。得られた腹水から抗L-PGDS抗体をアフィニティークロマトグラフィ―によって精製した。精製した抗L-PGDS抗体 (5E, 3B) の特異性を確認するため、卵白タンパク質のSDS-PAGE/Western blot解析を行った。その結果、L-PGDSと特異的に反応することが確認された。抗L-PGDS抗体 (5E, 3B) をそれぞれペプシン処理し、ウルトロゲルにてFab’を精製した。抗L-PGDS Fab' (5E)をガラクトシダーゼで標識し、抗L-PGDS Fab' (3B) については、DNP化、ビオチン化を行い、それぞれ抗L-PGDS Fab' (5E)-Gal, 抗L-PGDS Fab' (3B)-DNP-Bioを得た。 免疫複合体転移酵素免疫測定法には、L-PGDSの標準品が必要となる。今後、常に同じロットで検討を行うため、我々が既に構築していた組換え型鶏L-PGDS (rL-PGDS)発現系を用いて、glutathione-S-transferase (GST) との融合タンパク質として大腸菌にて大量発現させ、抽出した。これをアフィニテイーカラムによって精製し、融合タンパク質を特異的プロテアーゼにより切断してrL-PGDSを得た。 上述のようにして得られた、抗L-PGDS Fab' (5E)-Gal, 抗L-PGDS Fab' (3B)-DNP-Bio, rL-PGDSを用いて、現在、免疫複合体転移酵素免疫測定法の検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、抗体の大量調製を行い、高感度免疫測定法開発のために必要な2種の抗L-PGDS抗体をそれぞれガラクトシダーゼ標識、DNP化/ビオチン化を終えている。また、既に、高感度免疫測定法の検討に着手しており、予備的なデータも得られ、高感度化が期待される結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
免疫複合体転移酵素免疫測定法(高感度免疫測定法)の検討を引き続き行い、測定系の確立を行う。従来法との比較ならびに、本法における特異性の検討も行った後、実際に卵白、卵黄中のL-PGDSの測定を行う。この際、感度的には前処理等は必要ないと思われるが、卵白または卵黄中に抗原抗体反応を阻害する物質が含まれる等の理由により、上手く測定できない場合は、硫安沈殿等の前処理の検討を行う。その際の回収率については、先の組み換え型鶏L-PGDSを内部標準として添加し、求める。 鶏卵は産卵直後のものが必要となるため、県の畜産試験場や養鶏場から購入する。鶏卵種による違いや、保存温度や保存期間による鶏卵中L-PGDS量および局在(濃厚卵白、水様卵白、胚盤、卵黄など)の変化を明らかにする。濃厚卵白と水様卵白は佐藤らが報告した方法(日畜会報, 29, 297-300.)によって分離する。濃厚卵白は鶏卵が古くなるにつれて水様卵白となることが知られていることから、保存期間と局在の検討は同時に行う。鶏卵種の検討で、L-PGDS含量の低いものと高いものとで鶏の系統や飼育状況等の関連性を明らかにし、L-PGDS含量の少ない鶏卵の開発へと繋げる。L-PGDSは、睡眠や痛みなどに関与し、脳や生殖器などに多く発現することが知られている。このため、飼育環境によってL-PGDS含量が異なることも考えられる。保存温度によって差が認められれば、また、鶏卵の局在によってL-PGDS量に明らかな差が認められれば、その部分を取り除く簡便な方法の検討を行い、残りの部分のみを使用した離乳食の検討も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまで使用していたゲル濾過用の樹脂のメーカーでの取り扱いが中止となり、共同研究者の知人から譲渡された樹脂を使わせていただいたことにより、予定していたよりも少ない支出となった。
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次年度使用額の使用計画 |
今後、現在、販売されている樹脂を用いても本法が行えるよう検討を進めていく必要がある。H28年度は、先に述べた研究計画に加え、今後も本法による抗体のFab'の調製が行えるよう検討を進めていく。H27年度の残額については、その費用に充てる。現在は、抗L-PGDS Fab' (5E)をガラクトシダーゼで標識し、抗L-PGDS Fab' (3B) については、DNP化、ビオチン化しているが、逆の組み合わせとして抗L-PGDS Fab' (5E)をDNP化、ビオチン化し、抗L-PGDS Fab' (3B) をガラクトシダーゼで標識した方が感度がさらに上がることも考えられるため、その検討も併せて行う。
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