平成29年度は、β-コングリシニン(β-CON)摂取による種々の効果(体脂肪低減作用、肝臓トリグリセリド濃度低下作用、血圧上昇抑制作用、およびインスリン感受性改善作用)が、いわゆるメタボリックシンドローム状態ではどうかについて、メタボリックシンドロームモデルラット(SHR/NDmcr-cp)を用いて調べた。5週齢のSHR/NDmcr-cpを1週間予備飼育後、3群に分け、カゼインを20%含むAIN-93G組成の純化食(CAS食)、CAS食のタンパク質の半量を大豆タンパク質(SOY)またはβ-CONで置き換えたSOY食またはβ-CON食を、それぞれ12週間自由摂食させた。 尾部の血圧を経時的に測定した結果、β-CONはSOYよりも強い血圧上昇抑制作用を示すことが観察され、この効果には、少なくともレニン-アンジオテンシン系による制御および脂肪組織によるアディポネクチン産生増加に起因する血圧上昇抑制機構が関与していることが示唆された。 血清グルコース濃度への影響は明確でなかったが、血中HbA1cの割合はCAS群に比べβ-CON群で有意に低かった。飼育12週目に行った糖負荷試験では、有意ではなかったもののSOYおよびβ-CONにおいて耐糖能の改善傾向が観察された。これらの作用には、インスリン感受性の改善やアディポネクチンを介した糖代謝の改善などが関与していることが示唆された。 β-CONによる白色脂肪組織重量への影響は明確でなかったが、肝臓トリグリセリド濃度はCAS群に特にβ-CON群で有意な低値を示し、その要因として、少なくとも肝臓での脂肪酸合能の抑制およびβ酸化能の亢進の両方が考えられた。 以上のことから、β-CONは、メタボリックシンドローム状態においても種々の代謝改善作用を示すことが示唆された。
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