研究課題/領域番号 |
15K00835
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研究機関 | 長崎県立大学 |
研究代表者 |
駿河 和仁 長崎県立大学, 看護栄養学部, 准教授 (70315852)
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研究分担者 |
山口 範晃 長崎県立大学, 看護栄養学部, 助教 (80516295)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ビタミンA / β‐カロテン / 脂質吸収・代謝 / 妊娠・授乳期 / DOHaD |
研究実績の概要 |
本年度は、「妊娠・授乳期の栄養条件が成長後仔ラットの栄養素の吸収・代謝機能に与える影響」をテーマに研究を行った。6週齢SD系雌ラットを4群(各群5匹)に分け、①コントロール食(C群)、②ビタミンA欠乏食(A-群)、③ビタミンA過剰食(A+群)および④β-カロテン添加食(B+群)の各食餌を妊娠・授乳期間終了時まで約12週間自由摂食させた。なお雄ラットとの同居・交配は雌ラット11週齢時に16日間行った。各群の妊娠ラットより出生した雄性仔ラットは、21日齢時に強制離乳させ1週間標準飼料にて順化後、さらにそれぞれ2群ずつに分け、4週齢から屠殺・解剖を行う14週齢までコントロール食または60%E高脂肪食を自由摂取させた。 各実験食摂食開始(6週齢)から交配前(11週齢)までの母親ラットの摂食量および体重変動量ともに4群間で有意な差はみられず、授乳終了時(出産22日後)の体重も4群間で有意な差はみられなかった。一方、離乳後の仔ラットの体重増加量は、離乳後のコントロール食と高脂肪食摂取に関わらず、A-群の母親から出生した仔ラットで小さい傾向がみられた。仔ラットの血清グルコース濃度は全群間で差はみられなかったが、血清および肝臓のトリグリセリド量は、A-群の母親から出生した仔ラットで低い傾向がみられた。また、14週齢時の肝臓の総レチノール量は、C群の母親から出生した仔ラットに比べ、A-群やB+群の母親から出生した仔ラットでは差がみられなかったが、A+群の母親から出生した仔ラットでは有意に高い値を示した。これまでの結果より、特に妊娠前後にビタミンA不足状態であった母親ラットから出生した仔ラットでは、離乳後の成長が低い傾向を示し、さらに脂質の吸収や代謝機能にも影響がみられる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度(平成27年度)の研究計画は、同年度末の時点で計画の3分の4程度終了していたが、残りを次年度(28年度)に持ち越し、7月頃までにすべて終了した。一部の研究成果(2演題)は、国内の学会にて報告を行った。また、同研究成果は学術論文投稿に向けて現在準備を行っている。平成28年度の研究計画については、当初の予定より3か月ほど遅れて動物の飼育を開始(6月中旬から)し、約6か月間飼育(12月中旬まで)を行った。28年度の研究成果については上記の「研究実績の概要」に記載したとおり、現時点では生体試料中の主要成分の測定をほぼ終えたが、今後はそれらの変動のメカニズムを明らかにするために関連する遺伝子発現量やタンパク質量について解析を行い、今年度の8月までには終了する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度の研究計画については、上記の「現在までの進捗状況」に記載したように、一部の解析項目が未実施であるため、平成29年度も引き続き実験を継続し、平成30年度内に研究成果の学会発表および論文投稿を予定している。平成29年度(研究最終年度)は、当初の計画どおり「病態モデル動物を用いた生体機能異常発症に対するビタミンA栄養状態による影響の検討」のテーマで、以下の2つの研究を行う。1つ目は「肥満・2型糖尿病モデルマウスを用いた検討」について研究を行うが、当初計画していた病態モデル動物をラット(OLETFラット)からマウス(NSYマウス)に変更し、6月から約2.5か月間飼育し、その後予定していた項目について測定・解析を行い、平成30年2月末までに研究を終了する予定である。なお、実験動物を変更した理由は、OLETFラットに比べNSYマウスの方が糖尿病発症までに日数が早く、食餌量を少なくできるためである。さらに2つ目の研究テーマである「骨粗鬆症・下肢筋萎縮モデル雌ラットを用いた検討」については、7月から2か月間飼育をし、その後予定していた項目について測定・解析を行い、平成30年2月末までに研究を終了する予定である。これら2つの研究成果についても平成31年度までには学会発表および論文投稿を行うように準備をしていく予定である。
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