平成27年度は、タンパク質の品質管理機構とレドックス環境との関係について明らかとするため、タンパク質の合成や分解にかかわる細胞小器官に着目し、その細胞小器官に含まれるレドックス環境に関連する物質の分析方法について検討を行った。タンパク質の合成や分解過程のなかでもタンパク質のホールディングに際して、中心的にはたらく細胞小器官として小胞体が知られていることから、本研究では小胞体をターゲットとし、樹立細胞系であるヒト肝がん由来細胞から小胞体を含む画分を抽出した。さらに、抽出された小胞体に存在する酸化還元物質の分析を試みた。その結果、ヒト肝がん由来細胞の小胞体を含む画分から、複数の酸化還元物質の存在が認められた。また、そのなかに比較的高濃度で維持されている酸化還元物質が複数存在することが示された。しかしながら、これらの結果から、細胞培養中に存在する酸化還元物質がどの程度細胞内に取り込まれ、どのような動態を示すかについての情報や細胞培養中に存在する酸化還元物質と小胞体に含まれる酸化還元物質の直接的な関連性についての情報は得られておらず、今回行った実験で認められた結果の具体的な要因について、今後、明らかにしていく必要があると考えられる。また、小胞体の抽出過程では特定の実験処理が必要であり、そのために一定の操作時間も要することから、生体内に近い状態で、酸化還元物質の挙動やそのはたらきを明らかにできる分析方法を新たに検討する必要性があると考えられた。
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